『とある弁当屋の統計技師(データサイエンティスト)・3 — 女子高生乱子によるベイズ統計学入門講座』

石田基広・石田和枝

(2018年12月刊行予定,共立出版[とある弁当屋の統計技師・3],東京, 本体価格1,300円, ISBN:9784320113459版元ドットコム

ひさしぶりのシリーズ続刊.

『ホモ・デウス:テクノロジーとサピエンスの未来(上・下)』日本経済新聞書評

ユヴァル・ノア・ハラリ[柴田裕之訳]
(2018年9月30日刊行,河出書房新社,東京, 265 pp./284 pp., 本体価格1,900円/各巻, ISBN:9784309227368/ ISBN:9784309227375 → 版元ページ:上巻下巻版元特設サイト

ワタクシの日本経済新聞書評が文化の日に公開された:三中信宏“神" へと昇りゆく人間の運命」(書評:ユヴァル・ノア・ハラリ[柴田裕之訳]『ホモ・デウス:テクノロジーとサピエンスの未来(上・下)』2018年9月刊行,河出書房新社日本経済新聞2018年11月3日朝刊.

 

本書『ホモ・デウス』は,前作:ユヴァル・ノア・ハラリ[柴田裕之訳]『サピエンス全史:文明の構造と人類の幸福(上・下)』(2016年9月30日刊行,河出書房新社,東京, 267 pp./294 pp., 本体価格1,900円/各巻, ISBN:9784309226712 / ISBN:9784309226729 → 版元ページ:上巻下巻)の続編なので,この二作を通して読むと著者の想定している人類史の筋立てがよりわかりやすいだろう.前作同様『ホモ・デウス』も日本ですでにベストセラーになっているようだから,既読者にとっては言わずもがなかもしれないが.

 

ワタクシ的な読後感から言えば,ジャレド・ダイアモンドの一連の名著:『銃・病原菌・鉄:一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎(上・下)』(2000年10月2日刊行,倉骨彰訳,草思社,東京,317 pp./332+xvii pp., ISBN:4794210051 / ISBN:479421006X書評|版元ページ:上巻下巻)や『文明崩壊:滅亡と存続の命運を分けるもの(上・下)』(2005年12月28日刊行,楡井浩一訳,草思社ISBN:4794214642 / ISBN:4794214650 → 版元ページ:上巻下巻)から生態・進化・生物地理の要素を “脱色” してしまえば,ユヴァル・ノア・ハラリの人類史物語 ——「これからの人類は自然とか環境とは別の世界に生きろ」—— になるような印象を受けた.

 

本書『ホモ・デウス』は『サピエンス全史』とともに現代日本の「ビジネスマンの教科書」だそうだが,長谷川眞理子さんの朝日新聞書評(2018年10月20日)でも “ホモ・デウス” への “違和感” がありありと.ワタクシと同じ側の読み取りかな.

『A Course in Morphometrics for Biologists: Geometry and Statistics for Studies of Organismal Form』

Fred L. Bookstein
(2018年10月刊行, Cambridge University Press, Cambridge, xviii+527 pp., ISBN:9781107190948 [hbk] → 目次版元ページコンパニオンサイト

幾何学的形態測定学をこれから勉強する人にとっては必携本だろう.行き倒れないことを祈るのみ.過去の Bookstein 本で痛い目に遭ったことのある読者にとっては,本書のサブタイトルにある「geometry」とか「statistics」が一筋縄では行かないクセがあることは明らかだろう.冒頭から「統計学とは推測や推定のためのツールではなく “パターン認識” のための道具だ」(p.10)などとバクダン発言が.

 

これからぼちぼち読み進める覚悟だが,ざっと見渡した感じでは,かの “オレンジ本”:Fred L. Bookstein『Morphometric Tools for Landmark Data: Geometry and Biology』(1991年刊行, Cambridge University Press, Cambridge, xviii+435 pp., ISBN:0521383854 [hbk] → 版元ページ)よりはすっきり体系化されているような気がしないでもない.強いて言えばユニークな「ヴィジュアル多変量統計学」の本か.カバー絵がロダンの〈考える人〉なので,ワタクシも時に考え込みながら読むしかないのだろう.全編にわたって図版がたくさんある載っているので,一見読みやすそうに見えてもけっしてそうじゃない.輪読などしたら死亡者続出が危惧される.ひとりで籠もって読むべき本.裏表紙の「advance praise」には「very user-friendly」で「informal and accessible style」とあるが,その書き手が形態測定学理論家 Kanti V. Mardia 教授だと知れば大幅に割り引いて受け取らないといけない.F. James Rohlf の「an important book not for the impatient」の方が合っているかも.

 

四年前に出た:Fred L. Bookstein『Measuring and Reasoning: Numerical Inference in the Sciences』(2014年刊行,Cambridge University Press, New York, xxviii + 535 pp. + 4 color plates, ISBN:9781107024151 [hbk] / ISBN:9781107722828 [eBook] → 版元ページ)は途中で行き倒れてしまったのだが,今回の新刊の姉妹本に位置づけられる(「総論」vs. 「各論」という意味で).一挙にまとめてカタをつけたいところ.今回の新刊がロダンの〈考える人〉なら,前著のカバー絵はカスパー・ダーヴィト・フリードリヒの〈雲海の上の旅人〉.ロマンやなあ.しかし,この二冊を合わせると1,100ページもあるんだ(登攀不能か……).

『全国マン・チン分布考』感想

松本修
(2018年10月10日刊行,集英社インターナショナル[インターナショナル新書・030],東京, カラー折込図版2葉+365 pp., 本体価格1,100円, ISBN:9784797680300目次版元ページ

真っ昼間に読むべき本である.冒頭の第1章「東京での「おまん」の衝撃」では方言周圏論に基づく「マン・チン分布図」が提示されている.結論はここでもう出ている.続く第2章「「虎屋」の饅頭へのあこがれ」,第3章「「チャンベ」「おめこ」らの愛すべき素性」,第4章「女性の心に生きる「オソソ」」,第5章「琉球に旅した『古事記』の言葉」はそれぞれのことばの歴史を探る.そして第6章「「チンポ」にたどり着くまで」と第7章「「マラ」と南方熊楠」はいきなりボルテージが上がるのがおもしろい.「門」に「牛」を配して【まら】と読む漢字があることを初めて知った.歴史的な論議はここまで.短い第8章「女陰語の将来」と第9章「今までの「おまんこ」研究」を経て,最後の第10章「「まん」を生きる人生」は第1章を受けて書かれた顚末.そして,結びの章「花咲く京の春の大団円」は言祝ぎのエンディング.すばらしい読後感.長い年月を行き来して昔と今をつなぐ.まだ読んでないんやったら書店に走れ.リアル書店やと恥ずかしい? あかんたれやなあ.しゃあない,ネット書店でワンクリックや!

著者の連載記事もある:Honz【連載】『全国マン・チン分布考(全5回)』(2018年9月13日〜10月5日).

『A Course in Morphometrics for Biologists: Geometry and Statistics for Studies of Organismal Form』詳細目次

Fred L. Bookstein
(2018年10月刊行, Cambridge University Press, Cambridge, xviii+527 pp., ISBN:9781107190948 [hbk] → 版元ページコンパニオンサイト

【目次】
Frontmatter i
Epigraphs v
Dedication vi
Preface xiii

1. What This Book Is About 1

 1.1 Overview: Where Morphometrics Draws Its Ideas 1
 1.2 Our Basic Orientation: From Arithmetic to Understanding 8
 1.3 The Professional Setting (A Brief Intellectual Story) 12
 1.4 A More Detailed Preview of Coming Attractions 18

2. Getting Started: One or Two Measurements Only 23

 2.1 Elementary Averages from an Intermediate Standpoint 26
 2.2 Lines for Laws 40
 2.3 Gaussian Distributions and Galton's Quincunx 59
 2.4 Correlation 86
 2.5 Further Useful Formulas for This Setting 100
 2.6 Other Data Structures 112

3. Multiple Regression, in General and in Special Settings 137

 3.1 The General Logic of Multiple Regression 140
 3.2 Added-Variable Plots 163
 3.3 Special Case 1: Analysis of Covariance 177
 3.4 Special Case 2: Growth Series 198
 3.5 Special Case 3a: Linear Discriminant Analysis 208
 3.6 Special Case 3b: Quadratic Discrimination 222

4. Transition to Multivariate Analysis 241

 4.1 Aspects of Covariance Structure: An Introduction 242
 4.2 The Singular-Value Decomposition and Its Applications in Morphometrics 264
 4.3 The Wishart Dstribution: Its Formula and a Sketch of Its Justification 290

5. Geometric Morphometrics: Its Geometry and Its Pattern Analysis 322

 5.1 The Data of Geometric Morphometrics: How We Keep Our Place in an Anatomy 327
 5.2 Pattern Descriptors for Landmarks Taken Three at a Time 361
 5.3 Procrustes Matters: The Least-Squares Approach to Morphometrics 384
 5.4 Procrustes Coordinates, a Different Set of Shape Coordinates 397
 5.5 Thin-Plate Splines 425
 5.6 Finishing the Main Examples, Along with Some New Ones 448
 5.7 Envoi 489

 

References 494
Index 506

 

Appendix URL: http://www.cambridge.org/9781107190948

『醤油』(第5〜10章)

吉田元
(2018年3月15日刊行,法政大学出版局ものと人間の文化史・180],東京, 2 color plates + iv + 269 pp., 本体価格2,600円, ISBN:9784588218019目次版元ページ

読了.日本の醤油の海外輸出(第5章),日本国内でのローカルな醤油(第6章),中国産の醤油(第7章)と続く.第8章「豆味噌と溜り醤油」は,東海地方ローカルな醸造製品であるいわゆる「八丁味噌」とそれを絞った「溜り醤油」に光を当てている.通常の濃口醤油は原料として大豆と小麦を等量用いるのに対し(p. 24),豆味噌(八丁味噌)は大豆のみを原料とする(p. 195).第9章では明治以降の近代を,そして最後の第10章は現代の醤油醸造と国内での地域差を取り上げる.日本酒醸造と醤油醸造は “姉妹群” の関係にある.重要な税収源である日本酒醸造は国による積極的なてこ入れがあったのに対して,より規模の小さな醤油醸造はそれほど重視されなかったために産業としての近代化が遅れたと著者は指摘する.

Cf: 第1〜4章の感想