『辺境メシ:ヤバそうだから食べてみた』感想

高野秀行
(2018年10月25日刊行,文藝春秋,東京, 311 pp., 本体価格1,500円, ISBN:9784163909196版元ページ

読了.タイトル通り世界各地の “ヤバすぎる” 料理のオンパレード.雑誌連載をベースにした単行本なので,ひとつひとつのエッセイが短すぎる.カラー写真がもっとあってもよかったかも.同じ著者による前作:高野秀行謎のアジア納豆:そして帰ってきた〈日本納豆〉』(2016年4月25日刊行,新潮社,東京, 8 color plates + 351 pp., 本体価格1,800円, ISBN:9784103400714目次版元ページ)は,ひたすら「納豆」にこだわったパワフルな一冊だった.こういうスタイルで “ヤバい料理” をさらに深く掘り下げてもらうと読みでがあっただろう.

『辺境メシ:ヤバそうだから食べてみた』

高野秀行
(2018年10月25日刊行,文藝春秋,東京, 311 pp., 本体価格1,500円, ISBN:9784163909196版元ページ

世界各地での食文化突撃レポート.巻頭カラーページをめくるだけでもうすでにヤバそうかも.熊本で “危険ライン” 超えのカタツムリ生食の経験談が載っているが良い子はけっしてマネをしてはいけません.Togetter -「ふざけて生のナメクジ食べた男性 420日間昏睡 その後も重い麻痺が残り 8年後の今月2日に死亡」みたいになったら困るでしょ.

『書物のある風景:美術で辿る本と人との物語』

ディヴィッド・トリッグ[赤尾秀子訳]
(2018年10月20日刊行,創元社,大阪, 351 pp., 本体価格4,200円, ISBN:9784422701165版元ページ

「本を読む人」が描かれた古今東西の絵を蒐めた本.真っ黒な本体の上端タイトル部分だけが見えるカバージャケット(極太オビ?)にさらに細いオビが重ね巻きされた独特の装幀.五年前に同じ創元社から出た「本を読む人」の写真集:アンドレ・ケルテス[渡辺滋人訳]『読む時間』(2013年11月20日刊行,創元社,大阪,76 pp., 本体価格2,200円, ISBN:9784422700601版元ページ)とそっくりなので,これはもう並べるしかないな.

『衆芳画譜』(帖2〜5)

高松松平家所蔵[香川県歴史博物館/香川県ミュージアム編]

  • 薬草 第二(2007年3月31日刊行,香川県歴史博物館友の会博物図譜刊行会,高松, 115 pp.)
  • 薬木 第三(2008年3月31日刊行,香川県歴史博物館友の会博物図譜刊行会,高松, 87 pp.)
  • 花卉 第四(2010年3月20日刊行,香川県ミュージアム,高松, 113 pp.)
  • 花果 第五(2011年3月25日刊行,香川県ミュージアム,高松, 97 pp.)

『衆鱗図』(帖1〜4+研究編)

高松松平家所蔵[香川県歴史博物館編]

  • 第一帖(2001年3月31日刊行,香川県歴史博物館友の会博物図譜刊行会,高松, 111 pp.)
  • 第二帖(2002年3月31日刊行,香川県歴史博物館友の会博物図譜刊行会,高松, 115 pp.)
  • 第三帖(2003年3月31日刊行,香川県歴史博物館友の会博物図譜刊行会,高松, 101 pp.)
  • 第四帖(2004年3月31日刊行,香川県歴史博物館友の会博物図譜刊行会,高松, 70 pp.)
  • 研究編(2005年11月20日刊行,香川県歴史博物館友の会博物図譜刊行会,高松, xx+190+xi pp.)

『ホモ・デウス:テクノロジーとサピエンスの未来(上・下)』日本経済新聞書評

ユヴァル・ノア・ハラリ[柴田裕之訳]
(2018年9月30日刊行,河出書房新社,東京, 265 pp./284 pp., 本体価格1,900円/各巻, ISBN:9784309227368/ ISBN:9784309227375 → 版元ページ:上巻下巻版元特設サイト

ワタクシの日本経済新聞書評が文化の日に公開された:三中信宏“神" へと昇りゆく人間の運命」(書評:ユヴァル・ノア・ハラリ[柴田裕之訳]『ホモ・デウス:テクノロジーとサピエンスの未来(上・下)』2018年9月刊行,河出書房新社日本経済新聞2018年11月3日朝刊.

 

本書『ホモ・デウス』は,前作:ユヴァル・ノア・ハラリ[柴田裕之訳]『サピエンス全史:文明の構造と人類の幸福(上・下)』(2016年9月30日刊行,河出書房新社,東京, 267 pp./294 pp., 本体価格1,900円/各巻, ISBN:9784309226712 / ISBN:9784309226729 → 版元ページ:上巻下巻)の続編なので,この二作を通して読むと著者の想定している人類史の筋立てがよりわかりやすいだろう.前作同様『ホモ・デウス』も日本ですでにベストセラーになっているようだから,既読者にとっては言わずもがなかもしれないが.

 

ワタクシ的な読後感から言えば,ジャレド・ダイアモンドの一連の名著:『銃・病原菌・鉄:一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎(上・下)』(2000年10月2日刊行,倉骨彰訳,草思社,東京,317 pp./332+xvii pp., ISBN:4794210051 / ISBN:479421006X書評|版元ページ:上巻下巻)や『文明崩壊:滅亡と存続の命運を分けるもの(上・下)』(2005年12月28日刊行,楡井浩一訳,草思社ISBN:4794214642 / ISBN:4794214650 → 版元ページ:上巻下巻)から生態・進化・生物地理の要素を “脱色” してしまえば,ユヴァル・ノア・ハラリの人類史物語 ——「これからの人類は自然とか環境とは別の世界に生きろ」—— になるような印象を受けた.

 

本書『ホモ・デウス』は『サピエンス全史』とともに現代日本の「ビジネスマンの教科書」だそうだが,長谷川眞理子さんの朝日新聞書評(2018年10月20日)でも “ホモ・デウス” への “違和感” がありありと.ワタクシと同じ側の読み取りかな.

『A Course in Morphometrics for Biologists: Geometry and Statistics for Studies of Organismal Form』

Fred L. Bookstein
(2018年10月刊行, Cambridge University Press, Cambridge, xviii+527 pp., ISBN:9781107190948 [hbk] → 目次版元ページコンパニオンサイト

幾何学的形態測定学をこれから勉強する人にとっては必携本だろう.行き倒れないことを祈るのみ.過去の Bookstein 本で痛い目に遭ったことのある読者にとっては,本書のサブタイトルにある「geometry」とか「statistics」が一筋縄では行かないクセがあることは明らかだろう.冒頭から「統計学とは推測や推定のためのツールではなく “パターン認識” のための道具だ」(p.10)などとバクダン発言が.

 

これからぼちぼち読み進める覚悟だが,ざっと見渡した感じでは,かの “オレンジ本”:Fred L. Bookstein『Morphometric Tools for Landmark Data: Geometry and Biology』(1991年刊行, Cambridge University Press, Cambridge, xviii+435 pp., ISBN:0521383854 [hbk] → 版元ページ)よりはすっきり体系化されているような気がしないでもない.強いて言えばユニークな「ヴィジュアル多変量統計学」の本か.カバー絵がロダンの〈考える人〉なので,ワタクシも時に考え込みながら読むしかないのだろう.全編にわたって図版がたくさんある載っているので,一見読みやすそうに見えてもけっしてそうじゃない.輪読などしたら死亡者続出が危惧される.ひとりで籠もって読むべき本.裏表紙の「advance praise」には「very user-friendly」で「informal and accessible style」とあるが,その書き手が形態測定学理論家 Kanti V. Mardia 教授だと知れば大幅に割り引いて受け取らないといけない.F. James Rohlf の「an important book not for the impatient」の方が合っているかも.

 

四年前に出た:Fred L. Bookstein『Measuring and Reasoning: Numerical Inference in the Sciences』(2014年刊行,Cambridge University Press, New York, xxviii + 535 pp. + 4 color plates, ISBN:9781107024151 [hbk] / ISBN:9781107722828 [eBook] → 版元ページ)は途中で行き倒れてしまったのだが,今回の新刊の姉妹本に位置づけられる(「総論」vs. 「各論」という意味で).一挙にまとめてカタをつけたいところ.今回の新刊がロダンの〈考える人〉なら,前著のカバー絵はカスパー・ダーヴィト・フリードリヒの〈雲海の上の旅人〉.ロマンやなあ.しかし,この二冊を合わせると1,100ページもあるんだ(登攀不能か……).