『Logic, Semantics, Metamathematics: Papers from 1923 to 1938』目次

Alfred Tarski[Translated by Joseph H. Woodger]
(1956年刊行, Oxford at the Clarendon Press, xiv+471 pp.)

たまに本の街をゆるゆる歩くのは精神衛生上とてもよろしい.先日の神保町での収穫は新刊が中心だったが,実は崇文荘書店で出会った論理学者アルフレト・タルスキの論文集が本日最大の収穫だった.盟友ジョゼフ・ヘンリー・ウッジャーの訳.前所有者「Dr. E. Gehr」は巻末見返しにわざわざ Alfred North Whitehead & Bertrand Russell 『Principia Mathematica』と Jan Łukasiewicz の論理式表現の違いを対照表としてまとめてくれている.ポーランド学派,コワすぎる.

【目次】
Translator's Preface vii
Author's Acknowledgements xi

 

I. On the Primitive Term of Logistic 1
II. Foundations of the Geometry of Solids 24
III. On Some Fundamental Concepts of Metamathematics 30
IV. Investigations into the Sentential Calculus [with Jan Łukasiewicz] 38
V. Fundamental Concepts of the Methodology of the Deductive Sciences 60
VI. On Definable Sets of Real Numbers 110
VII. Logical Operations and Projective Sets [with Casimir Kuratowski] 143
VIII. The Concept of Truth in Formalized Languages 152
IX. Some Observations on the Concepts of ω-Consistency and ω-Completeness 279
X. Some Methodological Investigation on the Definability of Concepts 296
XI. On the Foundations of Boolean Algebra 320
XII. Foundations of the Calculus of Systems 342
XXIII. On the Limitations of the Means of Expression of Deductive Theories [with Adolf Lindenbaum] 384
XIV. On Extensions of Incomplete Systems of the Sentential Calculus 393
XV. The Establishment of Scientific Semantics 401
XVI. On the Concept of Logical Consequence 409
XVII. Sentential Calculus and Topology 421

 

Abbreviations 455
Bibliography 456
Subject Index 463
Index of Names and Persons 468
Index of Symbols 470

『昆虫考古学』感想

小畑弘己
(2018年12月21日刊行,KADOKAWA角川選書・610],東京, 234 pp., 本体価格1,700円, ISBN:9784047036451目次版元ページ

考古学的遺跡から出土する昆虫の一般論ではなく,もっとフォーカスを絞り込んで,土器などに “混入” した昆虫の遺物あるいはその圧痕から見えてくる古代人の生活と文化が議論されている.昆虫タフォノミーの本だとは意外な収穫だった.なぜコクゾウムシが縄文時代の土器に “練り込まれて” いたのかをめぐる著者の推論はとても魅力的だった.

『大学出版・117号(2019年冬)』

季刊『大学出版』最新号117号(2019年冬)が着便.特集〈学術書を読む〉にはワタクシも寄稿している:三中信宏学術書を読む愉しみと書く楽しみ —— 私的経験から」大学出版, (117): 1-8.これまでのバックナンバーと同様に,今号もそのうち版元ウェブサイトからフリーで pdf ファイルをダウンロードできるようになるだろう.

『随筆 本が崩れる』中公文庫版目次

草森紳一
(2018年11月25日刊行,中央公論新社[中公文庫・く-28-1], 東京, 308 pp., 本体価格880円, ISBN:9784122066571版元ページ

元本:草森紳一随筆 本が崩れる』(2005年10月20日刊行,文藝春秋[文春新書472],ISBN:4166604724感想版元ページ)の文庫化.目次は以下の通り:

【目次】
本が崩れる 9
素手もグローブ:戦後の野球少年時代 135
喫煙夜話〈この世に思残すこと無からしめむ〉 197
文庫版付録 273

  1. 魔笛なる奥野先生 274
  2. 本棚は羞恥する 281
  3. 白い書庫 顕と虚 284
  4. 本の精霊 290
  5. 本の行方 294
解説:六万二千冊の「蔵書にわれ困窮すの滑稽」[平山周吉] 299

本編はすべて復刻されているが,元本にあった池内紀の巻末エッセイ「【跋】やわらかい本」は文庫版からは省かれている.

『P値:その正しい理解と適用』目次

柳川堯
(2018年11月30日刊行,近代科学社[統計スポットライト・シリーズ 3],東京, x+117 pp., 本体価格2,200円, ISBN:9784764905832版元ページ

【目次】
まえがき iii

 

1. 基本的事項 1
2. P値とは? 11
3. P値の誤用 21
4. P値の算出 32
5. 統計的推論と統計的判定:真の検定を求めて 41
6. サンプルサイズの決定 50
7. P値と検出力 71
8. P値の統合:メタアナリシス 84
9. 検定の多重性調整P値 97

 

あとがき 111
参考文献 113
索引 115
著者紹介 117

『記憶術全史:ムネモシュネの饗宴』読売新聞書評

桑木野幸司
(2018年12月10日刊行,講談社講談社選書メチエ・689],東京, 348 pp., 本体価格2,000円, ISBN:9784065140260目次版元ページ

ワタクシの読売新聞書評(2019年1月6日付|jpeg)が〈本よみうり堂〉でオンライン公開された:三中信宏試行錯誤の歴史を解明」(2019年1月14日).この書評記事は,ブックバンにも転載されている.

試行錯誤の歴史を解明

 

 本書は15~17世紀の初期近代において、限りなく増え続ける知識を効率的に覚えるための記憶術が熱烈に求められ、そして忘れ去られていった歴史を、詳細な事例とともに解き明かす。記憶術の根幹は「場所(ロクス)」と「イメージ」と「秩序」の3原理にあると著者は言う。実在あるいは仮想の「場所」を想定し、記憶すべき内容を「イメージ」に変換し、この両者の組み合わせに対して効率的な「秩序」を与えることで、複雑かつ大量のコンテンツを「記憶」するわけだ。

 

 本書がターゲットとした初期近代は、生物分類学の歴史の上では、探検博物学の興隆により、全世界から動植物の標本や知見が西洋に大量に流入し始めた時代とちょうど一致する。それまでは個々の生物の特徴をくわしく記載するだけが博物学者の仕事だったのに対して、初期近代になると、蒐集(しゅうしゅう)したコレクションをいかにうまく分類するかを統括する原理と方法が求められるようになった。この時代における記憶術の発展が、記載から分類への必然的な移行と歩みをともにしていたと考えれば、近代生物学へのひとつの歴史的な道筋がそこに見えてくる。

 

 現代の進化生物学では、無数の動植物のDNA塩基配列情報に基づいて巨大な分子系統樹を推定することが普通になってきた。系統樹というダイアグラムによって可視化された「イメージ」の末端点や分岐点は、それぞれの生物が占める「ロクス」であり、その全体は系統関係によって体系化された「秩序」を形成している。これはもう現代の「記憶術」と呼ぶしかない。

 

 膨大な数の個物や知識と格闘したのは中世人だけではない。現代人もまた氾濫するデータや情報に日々翻弄(ほんろう)されている。こう考えれば、中世から現代にまで千年にわたって生き続けてきた記憶術は今なお存在意義があるといえよう。本書はその全貌(ぜんぼう)を知るためのタイムリーなガイドブックだ。

 

三中信宏[進化生物学者]読売新聞書評(2019年1月6日付)

『Biological Individuality: Integrating Scientific, Philosophical, and Historical Perspectives』

Scott Lidgard and Lynn K. Nyhart (eds.)
(2017年5月刊行, The University of Chicago Press, Chicago, iv+361 pp., ISBN:9780226446455 [pbk] → 版元ページ

「生き物の個体性(biological individuality)」とは何かを生物学・生物学哲学・生物学史の観点から考察した論文集.個体性みたいな “存在論” に関わる概念的議論がこんがらがることは昔も今もぜんぜん変わっていないのかもしれない.もう20年も前に読んだ同一書名の本:Jack Wilson『Biological Individuality: The Identity and Persistence of Living Entities』(1999年刊行,Cambridge University Press[Series: Cambridge Studies in Philosophy and Biology], Cambridge, xii+137pp. ISBN:0521624258 [hbk] → 書評目次)では,さまざまな生き物の “ありかた” をまず知ることが個体性に関する哲学的な議論を進める上での前提だと指摘されていた.その問題意識は本論文集にも継承されているようだ.

【目次】
Introduction: Working Together on Individuality [Lynn K. Nyhart and Scott Lidgard] 1
l. The Work of Biological Individuality: Concepts and Contexts [Scott Lidgard and Lynn K. Nyhart] 17
2. Cells, Colonies, and Clones: Individuality in the Volvocine Algae [Matthew D. Herron] 63
3. Individuality and the Control of Life Cycles [Beckett Sterner] 84
4. Discovering the Ties That Bind: Cell-Cell Communication and the Development of Cell Sociology [Andrew S. Reynolds] 109
5. Alternation of Generations and Individuality, 1851 [Lynn K. Nyhart and Scott Lidgard] 129
6. Spencer’s Evolutionary Entanglement: From Liminal Individuals to Implicit Collectivities [Snait Gissis] 158
7. Biological Individuality and Enkapsis: From Martin Heidenhain’s Synthesiology to the Völkisch National Community [Olivier Rieppel] 184
8. Parasitology, Zoology, and Society in France, ca. 1880–1920 [Michael A. Osborne] 206
9. Metabolism, Autonomy, and Individuality [Hannah Landecker] 225
10. Bodily Parts in the Structure-Function Dialectic [Ingo Brigandt] 249

Commentaries: Historical, Biological, and Philosophical Perspectives 275

11. Distrust That Particular Intuition: Resilient Essentialisms and Empirical Challenges in the History of Biological Individuality [James Elwick] 277
12. Biological Individuality: A Relational Reading [Scott F. Gilbert] 297
13. Philosophical Dimensions of Individuality [Alan C. Love and Ingo Brigandt] 318

 

Acknowledgments 349
List of Contributors 351
Index 353

『昆虫考古学』目次

小畑弘己
(2018年12月21日刊行,KADOKAWA角川選書・610],東京, 234 pp., 本体価格1,700円, ISBN:9784047036451版元ページ

遺跡や遺物から発見される昆虫の痕跡を手がかりに考古学的な考察へと導く.

【目次】
はじめに 8

 

I章 コン虫とガイ虫 11
II章 縄文土器ごきぶりホイホイ 27
III章 ムシとヒトの歴史――シラミとゴキブリ 51
IV章 ウンチの中から出てくるムシたち 75
V章 ハエが見ていた人の死――葬送昆虫考古学の世界 103
VI章 殺虫・防虫の考古学 135
VII章 クリを食べたコクゾウムシ 175
終章 害虫と人の未来 201

 

おわりに 212
参考・引用文献 218

『まちづくりのエスノグラフィ:《つくば》を織り合わせる人類学的実践』目次

早川公
(2018年12月7日刊行,春風社,横浜, 310+iv pp., 本体価格3,700円, ISBN:9784861106262版元ページ

つくば北条での “まちづくり” の紆余曲折の実践記録.この新刊がワタクシの元にたどり着いたのは必然かもしれない.山出淳也『Beppu Project 2005 – 2018』(2018年10月13日刊行,NPO法人BEPPU PROJECT,別府, 345 pp., 本体価格1,500円, ISBN:9784990900502目次版元ページ)と響き合うところがあるので,できれば合わせて取り上げたい.

【目次】
はじめに 7
序章 再帰的近代、人類学的実践、「まちづくり」 17
第1章 「まちづくり」への人類学的アプローチに向けて 33
第2章 再帰的近代化としての「まちづくり」 59
第3章 筑波山麓地域の生活世界 99
第4章 「あの頃の北条」をめぐる空間づくり 121
第5章 地域資源を活用した特産品づくり 189
第6章 まちづくり実践の「発明品」 241
終章 人類学的まちづくり実践とは 273
おわりに 289
参考文献 292
参考資料 309
索引 [i-iv]

[付記(2019年1月10日)]本書出版関連イベントが来月早々開催される:up Tsukuba「まちづくりから考える《つくば》のこれからと人文社会科学」(2019年1月10日)【日時】2019年2月5日(火)18:30–21:30【場所】up Tsukuba(つくばセンタービル内).
[付記(2019年2月5日)]Share Study β「連載「まちづくりのエスノグラフィ」―記事まとめと編集後記」(2019年2月3日)※本書を踏まえた連載「まちづくりのエスノグラフィ」(1〜5)が公開されている.

『BEPPU PROJECT 2005 – 2018』目次

山出淳也
(2018年10月13日刊行,NPO法人BEPPU PROJECT,別府, 345 pp., 本体価格1,500円, ISBN:9784990900502版元ページ

長年にわたって別府北浜を中心にレトロな温泉街でのモダンアート活動を長年続けてきた〈BEPPU PROJECT〉主宰者による回顧と展望.去年の師走に別府に行ったときは駅ナカの書店では見かけなかった本書を,年明けに大手町で手にしたのは何かの縁にちがいない.

【目次】
はじめに 4
1. アートと出会ってしまった! 6
2. アーティストとして 18
3. 別府との再会 39
4. BEPPU PROJECT誕生! 48
5. 初めての助成金申請 55
6. ムーブメントであること 61
7. アートNPO 68
8. 2人との出会い。町との関わり方 72
9. 創造都市って何だ? 88
10. platformの誕生 106
11. 『混浴温泉世界』の実現を目指し 115
12. 芸術祭の舞台裏 127
13. 続いていくということ 145
14. 2度目の芸術祭 155
15. もうダメかもしれない 167
16. もう1つの芸術祭『国東半島芸術祭』が始まる 172
17. 異人 —— 我々とは異なった考えをする者たち、移入 —— 181
18. 地霊 —— 場所に宿る精霊、場が持つ気配、潜在的な力 —— 183
19. LIFE —— 生命、生きて活動すること、人生、存在 —— 196
20. 同時にいろいろなことが動き始める 213
21. 最後の『混浴温泉世界』 232
22. 『混浴温泉世界』、そしてこの10年を振り返る 245
23. 新たな出発 260
24. クリエイティブなハブとして 279
25. 芸術祭を再デザインする 293
26. 何を目指しているのか 307
27. 町が変わり始めた 319
28. 2回目の国民文化祭 328
終わりに 340