『自然は導く:人と世界の関係を変えるナチュラル・ナビゲーション』目次

ハロルド・ギャティ[岩崎晋也訳]
(2019年9月10日刊行,みすず書房,東京, 2 color plates + iv + 279 pp., 本体価格3,600円 → 版元ページ

自然物から自分の位置と方向を読み取る「ナチュラル・ナビゲーション」の古典.GPSなど影も形もない時代の1958年出版.


【目次】
はじめに 1
1 自然は導く 5
2 昔の人類はいかにして旅をしたか 20
3 第六感は存在するか 44
4 円を描いて歩く 51
5 まっすぐに歩く 60
6 耳を使う 70
7 嗅覚を使う 76
8 空への反射──動かない雲についての注記 81
9 風向き 88
10 太陽と風がもたらす効果 95
11 樹木や、その他の植物 101
12 蟻塚の道しるべ 121
13 砂漠で 129
14 極地で 137
15 丘と川 144
16 距離を推測する 148
17 都市で 153
18 スポーツとしてのオリエンテーリング 161
19 波とうねり 166
20 海の色 172
21 海鳥の生態 178
22 月が告げること 220
23 太陽から方角を知る 227
24 星から方角を知る 231
25 星から時間を知る 242

太陽方位角の簡易表 247
謝辞 271

ナビゲーターたちのプリンス──訳者あとがきにかえて 273

『驚異と怪異:想像界の生きものたち』書評

国立民族学博物館(監修)・山中由里子(編)(2019年8月29日刊行,河出書房新社,東京, 239 pp., 本体価格2,700円, ISBN:9784309227818目次版元ページ

読了.古今東西のさまざまな “妖しいモノ” たちが所狭しと陳列されていて,この本がまさに驚異の部屋としての「ヴンダーカマー」を構成している.展示物の図版を眺めるのはもちろん楽しい体験だが,寄稿されているエッセイもおもしろい.コラム17:三尾稔「半人半獣のヴィシュヌ化身像」では,ヒンドゥー教最高神のひとりであるヴィシュヌと魔王ヒラニヤカシプの闘いについてこう書かれている:

「無敵の体となったことを確信したヒラニヤカシプは抗う人びとや神々を打ち倒し,遂に傲慢にも彼の世すべてを支配しようとする.まさにそのとき,ヴィシュヌ神はナラシンハ,つまり人でも神でも獣でもあるものとして姿をあらわし,昼と夜の境目である黄昏どきに,建物のなかと外の境目となるヒラニヤカシプの宮殿の入口で,空中でも地面でもない自らの膝の上で,武器を使わず素手で切り裂いてヒラニヤカシプを殺してしまう」(p. 127)

「ヒラニヤカシプは世界のすべての事物や時空間を分類し,そのどれにも負けない存在になることによって世界を支配しようとした.しかし,どんな分類や区別にも,それになじむことのない境目や曖昧なものがつきまとう.ヴィシュヌ神はその境界に宿り,慢心する魔王をあざ笑うかのように彼を討伐したのである」(p. 127)

光と影の境目である “罔両” はオニが憑いて妖怪化すれば “魍魎” となる.日本にかぎらずインドでも “罔両” に潜むヴィシュヌ神が “魍魎” だったことは意外や意外の感があるが,深く納得できる.万物を分けることができるとみなす分類学にとって “分類不能” な存在はいつでも災厄のもとだからだ.

フェルナンド・ペソア著(高橋都彦訳)『不安の書』(2007年1月31日刊行,新思索社ISBN:4783511969)には,「物事を分類し,分類することだけが科学だと心得ている科学的な人は一般に,分類できることが無限にあり,したがって分類しきれないということを知らない」と書かれている.

また,ジョルジュ・ペレック阪上脩訳]『考える/分類する〈日常生活の社会学』(2000年2月1日刊行,法政大学出版局[りぶらりあ選書],東京,vi+143pp.,本体価格1,800円,ISBN:4588022024目次)には,分類をめぐる警句が記されている:

「一つの規則によって,全世界を分類するというのは,じつに人をひきつけることであり,一つの全般的法則が現象全体を規定することになる.北半球と南半球,五大陸,男性と女性,動物と植物,単数と複数,右と左,四季,五感,六母音,七日,十二ヶ月,二十六文字.残念ながら,そんな分類は,うまくいかない.かつてうまくいったためしがないし,今後もうまくいかないだろう.そうはいっても,なおこれからも人びとは,これごれの動物が奇数の指の数や中空の角をもっているということで,分類するということを長く続けるだろう」(p. 120)

ヴンダーカマーには分類をめぐる人間の本性が見え隠れする.分類できる安心と分類できない不安は表裏一体であり,「分類のめまい」(ペレック, op. cit., p. 125)は分類者たる人間を悩ませ続ける.

『ブタの動物学 第2版』目次

田中智夫
(2019年9月10日刊行,東京大学出版会[アニマル・サイエンス:4],東京, iv+186 pp., 本体価格3,800円, ISBN:9784130740241版元ページ


【目次】
刊行にあたって[林良博・佐藤英明] i
第1章 イノシシからブタへ――イノシシの家畜化 1
第2章 雑食・胴長・鼻力――ブタのからだとそのしくみ 41
第3章 清潔好きな動物――ブタの行動 71
第4章 早熟・早肥・多産――家畜としてのブタ 107
第5章 これからのブタ学――ブタとヒトの未来 139
補章 最近の動向 163

あとがき 167
第2版あとがき 171
引用文献 173
事項索引 183
生物名索引 186

『海外で研究者になる:就活と仕事事情』読売新聞書評

増田直紀
(2019年6月25日刊行,中央公論新社中公新書・2549],東京, x+253 pp., 本体価格880円, ISBN:9784121025494目次版元ページ

読売新聞小評の鍵がはずれて公開された:三中信宏海外で研究者になる 増田直紀著」(2019年9月8日掲載|2019年9月17日公開)



 現在の日本では、政府が十分な資金を提供しないせいで、若手研究者が国内の大学や研究機関で安定した職を得ることがほんとうに難しくなってしまった。ポスドクの常勤職であっても任期が数年に限られている場合がほとんどだ。彼らが研究室主宰者(PI)として安定した任期なしの職位(テニュア・ポスト)をどのように確保できるかは日本の科学界の存続にも関わる悩ましい問題である。

 本書は、先が見えない日本ではなく、あえて海外に雄飛して研究活動を続けるための事例集だ。国情のちがいや海外で研究室を立ち上げる上でのポイントが、いま国外で活躍している日本人PIたちのインタビューを踏まえてまとめられている。彼らは、欧米はもちろん中国やシンガポールなどアジア、オーストラリアなど、世界に広がる。

 研究費の申請方法、給料の引き上げ交渉、授業や会議の進め方など内容はとても具体的だ。海外研究生活に伴う光と影が読み取れるので、ポスドクや大学院生はもちろん学部生にとっても大小さまざまな“心理的ハードル”を下げてくれる良書である。(中公新書、880円)

三中信宏[進化生物学者]読売新聞書評(2019年9月8日掲載|2019年9月17日公開)

『「私」は脳ではない 21世紀のための精神の哲学』目次

マルクス・ガブリエル[姫田多佳子訳]
(2019年9月10日刊行,講談社講談社選書メチエ・710],東京, 386 pp., 本体価格2,100円, ISBN:9784065170793版元ページ


【目次】
日本語版の出版に寄せて 11
序論 17
I 精神哲学では何をテーマにするのか? 57
II 意識 81
III 自己意識 171
IV 実のところ「私」とは誰あるいは何なのか? 215
V 自由 281
原注 [359-352]
文献一覧 [369-360]
概念索引 [376-370]
人名・作品名索引 [386-377]

『AI時代の労働の哲学』目次

稲葉振一郎
(2019年9月10日刊行,講談社講談社選書メチエ・711],東京, 216 pp., 本体価格1,600円, ISBN:9784065171806版元ページ


【目次】
はじめに 3
1 近代の労働観 13
2 労働と雇用 45
3 機械、AIと雇用 79
4 機械、AIと疎外 117
5 では何が問題なのか? 139
エピローグ AIと資本主義 167

注 205
あとがき 215

『叱られ、愛され、大相撲! 「国技」と「興行」の一〇〇年史』目次

胎中千鶴
(2019年9月10日刊行,講談社講談社選書メチエ・709],東京, 269 pp., 本体価格1,750円, ISBN:9784065172117版元ページ


【目次】
序章 叱られてばかりの一〇〇年 7
第1章 裕仁皇太子、土俵を見つめる――昭和天皇国技館 17
第2章 親分、力士百人を招く――台湾興行と任侠集団 55
第3章 青年教師、「相撲体操」を考案する――八尾秀雄の「角道」 93
第4章 インテリ力士、「国技」に悩む――笠置山の相撲論 141
第5章 戦場の兵士、横綱を待つ――双葉山皇軍慰問 185
終章 叱られて、愛されて 229
あとがき 257
参考文献 260
索引 [269-267]

『気候と人間の歴史 I :猛暑と氷河 13世紀から18世紀』目次

エマニュエル・ル=ロワ=ラデュリ[稲垣文雄訳]
(2019年9月10日刊行,藤原書店,東京, 734 pp., 本体価格8,800円, ISBN:9784865782370版元ページ

全3巻の1冊目.このボリュームであと2冊も積み上がるのかっ(震え声).


【目次】
まえがき 13
1 中世温暖期、おもに13世紀について 23
2 1303年頃から1380年頃 最初の超小氷期 37
3 クワットロチェント――夏の気温低下、引き続いて冷涼化 97
4 好天の16世紀(1500年から1560年まで) 165
5 1560年以降――天候は悪化している、生きる努力をしなければならない 193
6 世紀末の寒気と涼気――1590年代 247
7 小氷期その他(1600年から1644年まで) 301
8 フロンドの乱の謎 377
9 マウンダー極小期 417
10 若きルイ15世時代の穏やかさと不安定さ 541
11 1740年――寒く湿潤なヨーロッパの試練 583
結論 623

あとがき 635
訳者あとがき 643

原注 [687-648]
参考文献 [702-688]
付録 [719-703]
地名索引 [729-720]
人名索引 [734-730]

『驚異と怪異:想像界の生きものたち』目次

国立民族学博物館(監修)・山中由里子(編)
(2019年8月29日刊行,河出書房新社,東京, 239 pp., 本体価格2,700円, ISBN:9784309227818版元ページ

みんぱくでいま開催されている特別展〈驚異と怪異――想像界の生きものたち〉の展示図録.


【目次】
驚異とは[山中由里子
怪異とは[榎村寛之]
はじめに

第 I 部 想像界の生物相 13

水 15
天 65
地 89
驚異の部屋の奥へ 137

第 II 部 想像界の変相 157

聞く 161
見る 165
知る 189
創る 209

比較妖怪学の可能性[小松和彦] 232

参考文献リスト 234
掲載資料リスト 236
協力者一覧 239