『脱毛の歴史:ムダ毛をめぐる社会・性・文化』目次

レベッカ・M・ハージグ[飯原裕美訳]
(2019年7月20日刊行,東京堂出版,東京, 343 pp., 本体価格3,200円, ISBN:9784490210149版元ページ

ご恵贈ありがとうございます.生やすのも抜くのも歴史が絡みつく.


【目次】
序論 やむを得ない苦痛 9
第1章 毛のないインディアン —— 南北戦争以前の蛮行と礼節 33
第2章 体毛の手入れのための化学薬品 —— 自家製の治療法から、あらたな産業秩序まで 53
第3章 ひげ面の女と犬面の男 —— ダーウィンが明らかにした史上最大の露出とは 79
第4章 白く、滑らかで、ビロードのような肌 —— X線脱毛サロンと社会的地位の変化 105
第5章 腺によるトラブル —— 性ホルモンと常軌を逸した発毛 135
第6章 剃らざる者 —— 「腋毛ぼうぼうのフェミニスト」とウーマン・リブ 155
第7章 一番下をきれいにする —— 労苦、ポルノグラフィとブラジリアンワックス 181
第8章 魔法の弾丸 —— レーザー脱毛の規制と選択的医療 205
第9章 次なるフロンティア —— 遺伝学的エンハンスメントと体毛の終焉 229
結論 私たちはみな毟られている 251

謝辞 259
原注 [338-267]
索引 [343-339]

『トウガラシ大全:どこから来て、どう広まり、どこへ行くのか』感想

スチュアート・ウォルトン[秋山勝訳]
(2019年9月24日刊行,草思社,東京, 311 pp., 本体価格2,000円, ISBN:9784794224149 → 目次|版元ページ

辛さ耐性のないワタクシには本書を読み進むのはつらい “修行” だ.トウガラシの辛さはスコヴィル単位(SHU)で測定されるが,パプリカは0SHU,シシトウは “当たり” でも1000SHU,タバスコソースは2000SHU,ハラペーニョが1万SHU,タカノツメでやっと3万SHUなのに,世の中には想像を絶する激辛トウガラシがあって(というか人為育種されて),おそれを知らぬ “カプサイシン闘士” たちは競ってこの世の “地獄” に落ちていく.たとえば:

  • 「身もだえするような激しい辛さ」=タイ・ドラゴンF1(10万SHU)
  • 「頭のてっぺんが吹っ飛ぶ」=ブート・ジョロキア(100万SHU)
  • 「猛火のような辛さは尋常ではない」=トリニダード・モルガ・スコーピオン(200万SHU)
  • 「口をも焦がさんばかり」=キャロライナ・リーバー(220万SHU)

と半径1メートル以内に近づくと辛さが伝染してきそうだ.トウガラシ原産地の中米ではとりわけ多様度が高い.ワタクシもオアハカのレストランで食べたことがあるが,メキシコ料理に使われるモーレソースにはさまざまなトウガラシが用いられているという.ワタクシはシシトウやパプリカでもう十分でございます.

D'Arcy Wentworth Thompson 訳『Historia Animalium』

Aristotle[translated by D'Arcy Wentworth Thompson]
(1910年刊行,Oxford at the Clarendon Press)

マサチューセッツ州リンの古書店〈Saul54〉から着便.どこかの図書館の除籍本.オクスフォード版アリストテレス全集〈The Works of Aristotle Translated into English under the Editorship of J. A. Smith and W. D. Ross〉の Volume IV.『On Growth and Form』以前のダーシー・トムソンは父親仕込みの正統派古典学者だったということをすっかり忘れていた.この『動物誌』には生きものの図がいくつも載っていて,岩波書店アリストテレス全集の『動物誌』とはずいぶん感じがちがうなあ.

『Aristoteles Graece ex recognitione Immanuelis Bekkeri, 1831. Aristotelis Opera edidit Academia Regia Borussica, Volumen Prius』

Archive.org: https://archive.org/details/aristotelisopera01arisrich/page/n7

いわゆる「Bekker版」アリストテレス全集の第1巻.これに付けられた「Bekker数」は後代のアリストテレス全集でもつねに参照されている.こんな機会でもなければギリシア語のアリストテレスの著作など見ることはなかっただろう.版元は Georg Reimar, Berlin.

『身体の植民地化:19世紀インドの国家医療と流行病』目次

デイヴィッド・アーノルド[見市雅俊訳]
(2019年9月20日刊行,みすず書房,東京, viii+320+xxxii pp., 本体価格7,600円, ISBN:9784622088516版元ページ

原書は25年前に出た.植民地医療史の古典的研究との位置づけ.


【目次】
日本語版によせて v
謝辞 vii

序論 3
第1章 西洋の治療法と東洋の身体 13
第2章 植民地の飛び地――軍隊と監獄 61
第3章 天然痘――女神の身体 113
第4章 コレラ――無秩序としての病気 155
第5章 ペスト――身体にたいする攻撃 195
第6章 健康とヘゲモニー 233
結論 283

註記 289
訳者あとがき 315
図表一覧 [xxxiii]
文献一覧 [xv-xxxii]
事項索引 [vi-xiii]
人名索引 [i-v]

『言語哲学から形而上学へ:四次元主義哲学の新展開』目次

中山康雄
(2019年9月20日刊行,勁草書房,東京, xiv+279+xviii pp., 本体価格3,200円, ISBN:9784326154623版元ページ

レオロジー(「部分全体論」)について書かれているのでつい手に取ったのだが,ワタクシはこの “山” から生きて帰ってこれるのだろうか…….


【目次】
まえがき i

I 言語哲学形而上学的前提

第1章 言語哲学史粗描 3
第2章 部分全体論 41

II 実体論とプロセス存在論

第3章 実体論の歴史 67
第4章 プロセス存在論 93

III プロセス形而上学

第5章 プロセス存在論とプロセス認識論 123
第6章 時間と様相 145

IV プロセス形而上学の適用

第7章 プロセス形而上学と〈拡張された行為主体〉 191
第8章 プロセスの事例 211

付録 245
 付録1 プロセス存在論入門 245
 付録2 分岐的プロセスモデル入門 258

註 271
あとがき 277
文献一覧 [vii-xviii]
事項索引 [iv-vi]
人名索引 [i-iii]

『モービー・ダック』読売新聞書評

ドノヴァン・ホーン[村上光彦・横濱一樹訳]
(2019年7月15日刊行,こぶし書房,東京, 654 pp., 本体価格2,800円, ISBN:9784875593515目次版元ページ
https://leeswijzer.hatenadiary.com/entry/2019/09/27/051740

読売新聞大評が公開された:三中信宏アヒルちゃんの大冒険 —— モービー・ダック ドノヴァン・ホーン著 こぶし書房 2800円」(2019年9月29日掲載|2019年10月7日公開)



ヒルちゃんの大冒険

 『モービー・ダック』というタイトルはハーマン・メルヴィル作の古典『白鯨(モービー・ディック)』にちなむ。1992年1月、香港発ワシントン州タコマ行きのコンテナ輸送船エヴァー・ローレル号がアリューシャン列島近海で大波に翻弄され、甲板に積み上げられていた3万個もの“浴用玩具”(子供がお風呂で遊ぶ黄色いアヒルなど)が荒れた海に落ちてしまった。この海難で北太平洋に投げ出された大量のプラスチック製アヒルたちはその後何年にもわたって洋上を漂流し、北米のあちこちの海岸に漂着し目撃されることになる。本書はこのアヒルの“大航海冒険物語”の顛末を追った広範かつ詳細な記録だ。教師の職をなげうってまで追跡し続けた著者の執念は確かに『白鯨』の主人公である“エイハブ船長”を髣髴とさせる。

 かわいらしいアヒルのイメージからは想像もできないほど本書の内容は多岐にわたる。全650ページを読み進むうちに、読者は、海岸漂着物を蒐集するビーチコーマーなる北米のサブカルチャー集団に出会い、相次ぐ海難事故の秘められた歴史に思いを馳せ、広大な海を漂流するプラスチック・ゴミがもたらす海洋汚染問題にたどり着く。さらに、著者は中国の玩具製造拠点である珠江デルタ経済区の東莞に潜入し、かつてのエヴァー・ローレル号とほぼ同じ航路をたどる輸送船にも乗りこみ、はては北極圏調査船に同乗して氷の海を突き進む。その突撃精神には驚くばかりだ。

 ただのおもちゃの追跡劇にしては本書の舞台設定はあまりにも大仰すぎるかもしれない。しかし、文字通りの“知的ごった煮”の波間に見え隠れするのは、著者自身の人生航路だ。エイハブ船長が白鯨との格闘の末にピークオッド号とともに海に沈んでも、海を漂うアヒルたちがいずれぼろぼろに劣化してプラスチックの破片と成り果てても、著者の“自分探し”の旅路に終わりはない。村上光彦・横濱一樹訳。

三中信宏[進化生物学者]読売新聞書評(2019年9月29日掲載|2019年10月7日公開)

『消えゆく砂浜を守る:海岸防災をめぐる波との闘い』目次

コーネリア・ディーン[林裕美子・宮下純・堀内宜子訳]
(2019年9月20日刊行,地人書館,東京, x+444 pp., 本体価格3,600円, ISBN:9784805209318版元ページ

原書は20年前の出版だが,侵食される砂浜の保全と復元についての本.


【目次】
プロローグ 1
第1章 九月のハリケーン、護岸壁の街の行く末 5
第2章 波にのまれる砂の岬 27
第3章 突堤を突き出して砂を止めたい 59
第4章 砂州の切れ目に導流堤は不親切 111
第5章 養浜された海岸の異常な食欲 147
第6章 山から下る砂でできる浜 191
第7章 特大が接近中、避難せよ 215
第8章 漂砂の手がかりを求めて 245
第9章 見て見ぬふり 285
第10章 売りに出された海岸 331
エピローグ 371

謝辞 381
訳者あとがき[林裕美子] 385
日本の海岸保全はどうあるべきか —— 日本語版への解説[佐藤愼司] 393
   
原注 [412-403]
参考文献 [430-413]
索引 [444-431]
著者・訳者紹介

『クモのイト』目次

中田兼介
(2019年9月26日刊行,ミシマ社,東京, 196 pp., 本体価格1,800円, ISBN:9784909394262版元ページ

前回の地引網でもクモ本が上がったけど,今年は蜘蛛が豊漁?


【目次】
はじめに 2
この本に出てくる主なクモたち 12
第1章 クモと人間の不思議な関係 15
第2章 クモのことあれこれ 37
第3章 クモの網、最強説 63
第4章 恋するクモたち 87
第5章 クモ的思考 その1 個性って? 111
第6章 クモ的思考 その2 コミュニケーション上手になりたい 133
第7章 クモ的思考 その3 不確実な世の中をサバイバルする 153
第8章 もしもクモがいなかったら 173
あとがき 192