『青狐の島:世界の果てをめざしたベーリングと史上最大の科学探検隊』目次

ティーブン・R・バウン[小林政子訳]
(2020年1月24日刊行,国書刊行会,東京, 291 pp., 本体価格3,200円, ISBN:978-4-336-06386-1版元ページ

ベーリング海峡」にその名を残すベーリングの評伝.シベリアからアラスカにかけての北太平洋を縦横無尽.


【目次】
歴史年表 7
序文 世界の果て 15

第1部 ヨーロッパ

第1章 大使節
第2章 第一次カムチャツカ探検隊
第3章 完璧な計画

第2部 アジア

第4章 サンクトペテルブルクからシベリアへ
第5章 対立
第6章 幻の島々

第3部 アメリ

第7章 大陸ボリシャヤ・ゼムリヤ(アラスカ)
第8章 遭遇
第9章 海難

第4部 どこかわからない場所

第10章 青狐の島
第11章 死と賭けトランプ
第12章 新しい聖ピョートル号

結び ロシア領アメリカ 255

資料・文献について 269
謝辞 272
訳者あとがき 273
参考文献 [286-276]
索引 [291-287]

『騒音の文明史:ノイズ都市論』目次

原克
(2020年1月31日刊行,東洋書林,東京, 431 pp., 本体価格3,800円, ISBN:978-4-88721-827-7版元ページ

読書委員会でもコメントしたのだが,本書の組版は尋常ならざるノイジーさ.ギリギリまで字を詰め込んでいて,裁ち落としがちょっとでもズレたらアウトやろ状態.おそらく狙っているんだろうけど.


【目次】
はじめに 2
第1章 年の周縁の音世界 6
第2章 寺の鐘と教会の鐘の政治学 40
第3章 太鼓と木魚の社会秩序 77
第4章 拍子木と自由の観念 122
第5章 精神という神話とモダンタイムズ 160
第6章 プライバシーの音響学 197
第7章 騒音と静寂の権力論 236
第8章 都市の交響楽 284
第9章 サイレンと国家イデオロギー 330
第10章 ラジオと時代の尖端性 368
おわりに 416

註 [426-419]
主要参考文献 [429-419]
詳細目次 [431-400]

『アリストテレス:生物学の創造[上・下]』読売新聞書評と読書メモ

アルマン・マリー・ルロワ[森夏樹訳]
アリストテレス 生物学の創造[上]』(2019年9月17日刊行,みすず書房,東京, viii, pp. 1-291, 63, 本体価格3,800円, ISBN:978-4-622-08834-9目次版元ページ
アリストテレス 生物学の創造[下]』(2019年9月17日刊行,みすず書房,東京, iv, pp. 293-586, 35, 本体価格3,800円, ISBN:978-4-622-08835-6目次版元ページ

読売新聞大評が掲載された:三中信宏よみがえる哲人の業績 —— アリストテレス 生物学の創造 上・下…アルマン・マリー・ルロワ著」(2020年1月19日掲載|2020年1月27日公開)



よみがえる哲人の業績

 生物学の歴史をさかのぼれば、アリストテレスにたどりつく。しかし、「アリストテレス以来2000年の歴史をもつ生物学」と口にするとき、それは「中国4000年の伝統の味」と同じく単なる枕詞でしかない。現代のわれわれは、2400年も前のギリシャ時代に生きたこの哲人とその科学上の業績を手の届かない“神棚”に祭り上げておけばそれでよいのだろうか。

 上下巻合わせて600頁にもなる大著だが、読み終えて即座に「おみそれしました」とひれ伏してしまった。アリストテレスの哲学的著作である『分析論前書』『分析論後書』『カテゴリー論』などはその厳密さと難解さをもって知られる。一方、『動物誌』『動物発生論』『動物部分論』など自然誌の著作群には、具体的な動植物に関する膨大な知見が盛り込まれていて、ずいぶん趣が異なる。1世紀前の生物学者ダーシー・ウェントワース・トンプソンは『動物誌』をギリシャ語から翻訳して飽くことなく詳細な注釈を付けた。

 本書は、アリストテレスがどのようなデータと論理の上に生物学を築いたのかを、フィールドワークの現場となったエーゲ海レスボス島にある潟湖を視野に置きながら考察する。彼が提唱する生物体をつくりあげる究極要因としての「形相」は長らく概念的誤謬であるとみなされてきた。しかし、現代の発生生物学の観点から見れば因果過程としての個体発生における「情報発現」はまさに形相因に通じるものがあると著者は言う。また、自然の存在物に関してアリストテレスが抱いた連鎖と充満と推移のイメージは、後世の生物多様性の理解に深遠な影響を及ぼした。

 評者の研究室には旧版のアリストテレス全集が書棚の上に何年もひもとかれないまま静かに鎮座している。本書を読了したいま、ふたたびアリストテレスに手を伸ばそう。2000年あまりの年月を隔てた響き合いは途切れることがない。“彼”は細部に宿る。森夏樹訳。

三中信宏[進化生物学者]読売新聞書評(2020年1月19日掲載|2020年1月27日公開)



本書はアリストテレスの生物学的業績に関する本であると同時に,生物学側からのアリストテレス研究史の本でもある.

ワタクシが本書を手にして驚倒したのは,後年『成長と力』(1917)を書いたダーシー・ウェントワース・トンプソンのギリシア古典学の素養の深さだった.ダーシー・トンプソンの前半生はアリストテレス研究に捧げられている.『動物誌』のギリシア語から翻訳と徹底的な注解をルロワは随所で引用している.というか,原書タイトル『The Lagoon: How Aristotle Invented Science』の「ラグーン(潟湖)」とはトンプソンの文に依拠している.ギリシャ古典の鳥類名と魚類名に関する同定辞典を出したダーシー・トンプソンにとっては,還暦近くになって出した『成長と力』はほんの手慰みだったのではないかと思えるほどだ.ギリシャ古典の教師だった父親の膝の上で物心つく頃からギリシャ語に馴染んできたトンプソン,げにおそるべし.

もちろん,2400年も経ってなお降臨するアリストテレスも驚異的なら,それら全部をひっくるめてこの大著をものしたルロワも輪をかけてヤバすぎる.さらに訳書のカバージャケットはみすず書房らしからぬ和風ヴィジュアルなので手に取る価値あり.

『ユリイカ2020年2月号:特集=書体の世界 ― 書・活字・フォント』目次

(2020年2月1日刊行,青土社ユリイカ 52巻2号],東京, 本体価格1,600円, ISBN:978-4-7917-0381-4版元ページ

ワタクシの寄稿:三中信宏「字体と書体と字形の系統樹:進化する文字世界を鳥瞰する」(pp. 156-164)


【〈特集=書体の世界 ― 書・活字・フォント〉目次】

❖インタビュー

書体談話 府川充男[聞き手=大熊肇] 40

❖書体設計者の営為

使いたくなる書体は誰が創ってくれるのだろう 味岡伸太郎 46
活字書体設計としての復刻、翻刻、そして新刻 今田欣一 51

❖書体史再考

明朝体活字の誕生と東遷 小宮山博史 57
活字文献学考 鈴木広光 66
近代日本語活字・書体史研究上の話題 内田明 ※注釈リンク集 74

❖写研の時代

「ナール」「ゴナ」あるいは大衆文化の中の文字――書体デザイナー 中村征宏と、元・写研(社長室企画宣伝部長)杏橋達磨に聞く 阿部卓也 86

❖誰がための書体――あるいは政治と信仰をめぐって

「UDフォント」の開発にあたって 高田裕美 108
書体・字体事件簿 松田行正 113
書体論のためのランダムノート――規範と自由、彫琢と装飾 古賀弘幸 122
妙好としての書体――柳宗悦真宗仮名 扉野良人 133

❖対談

文字のないタイポグラフィに向かって――未来を広げるためのデザイン 木緒なち・有馬トモユキ 141

❖アルファベットの遠近法

インターネットっぽさの所作 ばるぼら 152
字体と書体と字形の系統樹――進化する文字世界を鳥瞰する 三中信宏 156
「ネオ・グロット」とスイス・スタイルの受容――一九六〇年代日本におけるモダン・タイポグラフィの展開 山本政幸 165
欧文書体とそれ以外 大曲都市 178
書体の透明性 古賀稔章 186

❖アンケート

書体をめぐる三つの質問――趣味と実用と探求のアンケート 

有馬トモユキ,今垣知沙子,大倉真一郎,奥定泰之,小沼宏之,葛西薫カニエ・ナハ,川名潤,北岡誠吾,コバヤシタケシ ,坂野公一,佐藤亜沙美,重実生哉,白井敬尚,鈴木哲生,大日本タイポ組合高山羽根子,藤田重信,水戸部功,宗利淳一,山田和寛,山本浩貴+h,結崎剛 ,六月

❖Typogra-fiction

書体とその引用 フィクショナガシン 215
汎詩論、銀杏、ナイフ、苦役 尾中俊介 221
書体は人になにをもたらすか――文体論のためのメモランダム 山本貴光 230

❖書体の容器

模倣と創造――『ユリイカ』本文書体の変遷 正木香子 239
タイポグラファとしての小村雪岱 真田幸治 246
タイプフェイスと盆栽――自然と人工の往復運動 大山エンリコイサム 255
かたちとしるしの水際で――羽良多平吉のフォントロジー 澤直哉 264
装丁表現が書体表現にすり替わらないために 長田年伸 272

『仙童たち:天狗さらいとその予後について』

栗林佐知
(2020年1月20日刊行,未知谷,東京, 213 pp., 本体価格2,000円, ISBN:978-4-89642-598-7

平田篤胤『仙境異聞』に着想を得た小説.てっきり現代民話ノンフィクションと思ったら,フィクションだった.いつもながら未知谷の造本はとても好ましい.

『ハウ・トゥー:バカバカしくて役に立たない暮らしの科学』

ランドール・マンロー[吉田三知世訳]
(2020年1月25日刊行,早川書房,東京, 400 pp., 本体価格1,600円, ISBN:978-4-15-209909-9版元ページ

ご恵贈ありがとうございます.前著:ランドール・マンロー[吉田三知世訳]『ホワット・イフ?──野球のボールを光速で投げたらどうなるか』(2015年6月25日刊行,早川書房,東京,383 pp., 本体価格1,500円, ISBN:978-4-15-209545-9版元ページ)の続編.