『統計学を哲学する』目次

大塚淳
(2020年10月30日刊行,名古屋大学出版会,名古屋, iv+242 pp., 本体価格3,200円, ISBN:978-4-8158-1003-0版元ページ


【目次】

序章 統計学を哲学する? 1

 1 本書のねらい 1
 2 本書の構成 5

第1章 現代統計学パラダイム 12

 1 記述統計 12
    1-1 統計量 13
    1-2 「思考の経済」としての記述統計 16
    1-3 経験主義、実証主義帰納の問題 19
 2 推測統計 21
    2-1 確率モデル 23
    2-2 確率変数と確率分布 27
    2-3 統計モデル 35
    2-4 推測統計の世界観と「確率種」 43

第2章 ベイズ統計 50

 1 ベイズ統計の意味論 50
 2 ベイズ推定 57
    2-1 仮説の確証と反証 58
    2-2 パラメータ推定 59
    2-3 予測 62
 3 ベイズ統計の哲学的側面 63
    3-1 帰納論理としてのベイズ統計 63
    3-2 内在主義的認識論としてのベイズ統計 65
    3-3 ベイズ主義の認識論的問題 71
    3-4 小括:ベイズ統計の認識論的含意 88

第3章 古典統計 91

 1 頻度主義の意味論 92
 2 検定の考え方 97
    2-1 蓋然的仮説の反証 97
    2-2 仮説検定の考え方 100
    2-3 検定の構成 101
    2-4 サンプルサイズ 106
 3 古典統計の哲学的側面 107
    3-1 帰納行動としての検定理論 107
    3-2 外在主義認識論としての古典統計 109
    3-3 頻度主義の認識論的問題 119
    3-4 小括:ベイズ/頻度主義の対立を超えて 130

第4章 モデル選択と深層学習 135

 1 最尤法とモデル適合 136
 2 モデル選択 140
    2-1 回帰モデルとモデル選択の動機 140
    2-2 モデルの尤度と過適合 142
    2-3 赤池情報量規準AIC) 144
    2-4 AICの哲学的含意 146
 3 深層学習 153
    3-1 多層ニューラルネットワークの構成 154
    3-2 深層モデルの学習 157
 4 深層学習の哲学的含意 160
    4-1 プラグマティズム認識論としての統計学 160
    4-2 機械学習と徳認識論 164
    4-3 深層学習の哲学的含意 171

第5章 因果推論 180

 1 規則説と回帰分析 181
 2 反事実条件アプローチ 186
    2-1 反事実条件説の意味論 186
    2-2 反事実的因果の認識論 189
 3 構造的因果モデル 199
    3-1 因果グラフ 200
    3-2 介入とバックドア基準 204
    3-3 因果探索 208
 4 統計的因果推論の哲学的含意 210

終章 統計学存在論・意味論・認識論 216

 1 統計学存在論 216
 2 統計学の意味論 221
 3 統計学の認識論 225
 4 結びにかえて 228


 参考文献 231
 あとがき 237
 索引 239

『標本バカ』読売新聞書評

川田伸一郎(著)・浅野文彦(絵)
(2020年10月8日刊行,ブックマン社,東京, 335 pp., 本体価格2,600円, ISBN: 978-4-89308-934-2 → 版元ページ

読売新聞小評が公開された:三中信宏標本バカ 川田伸一郎著」(2020年11月15日掲載|2020年11月24日公開)



 博物館に陳列されているさまざまな動物の剥製標本は来館者の好奇心をふくらませ想像力をかきたてる。野生では絶滅してしまった動物の剥製もある。しかし、いずれもきれいに整形された標本は展示室の中でまるで生きているかのような独特の存在感を放って動き回る。それらの標本は展示だけでなく科学研究の基礎データとしても貴重だ。

 本書は国立科学博物館研究主幹の著者が雑誌『ソトコト』に長期連載してきたコラムの単行本化だ。著者はもともとモグラの研究者だが、キリンやクジラまでありとあらゆる動物の標本づくりに国内を東奔西走する。各コラム冒頭を飾るユーモラスなイラストとともに語られるバックヤードでの奮闘エピソードの数々は一気読みまちがいなしだ。

 標本づくりは熟達した“匠”の技の賜物である。死体につきものの“腐敗”という無慈悲な運命のもと、手際よく皮をはいで解体し、余分な肉をそぎ取り、いったん土に埋めて微生物などに分解させ、最後に残った骨格を標本にする。こんな仕事は確かに“標本バカ”でなければ続かないにちがいない。(ブックマン社、2600円)

三中信宏[進化生物学者]読売新聞書評(2020年11月15日掲載|2020年11月24日公開)



標本づくりに東奔西走するモグラの先生が描く博物館バックヤード逸話の単行本化.イラストが微笑ましい.〈ソトコト〉誌での連載が今も続いているので,続刊もありなんじゃないでしょうか.標本づくりは話のネタとしてはとてもおもしろい.某大学の理学部2号館屋上で動物のご遺体を “風葬” していたところ,カラスだか猛禽だかがホネをかっさらって,隣接する北白川の住宅街の路上に放り投げたため,警察が出動したのしないのというお話を某名誉教授からうかがったことがありますな.それとは別に,カバだかサイだかの巨大なご遺体を犬山城下のおサルの楽園に運び込んで一悶着あったという話を某遺体科学のセンセイに本郷でうかがったこともありますな.