グイド・バルブイアーニ[栗原俊秀訳]
(2024年10月30日刊行、河出書房新社、東京, 15 color plates + 257+20 pp., 本体価格2,250円, ISBN:978-4-309-22937-9 → 版元ページ)
『心の哲学史』目次
村田純一・渡辺恒夫(編)
(2024年11月12日刊行、講談社、東京, 638+xi pp., 本体価格3,200円, ISBN:978-4-06-523522-5 → 版元ページ)
【目次】
まえがき(村田純一) 1
第1章 心の哲学史の始まり――一九世紀、科学と哲学の交叉(村田純一) 19
コラムI エーレンフェルスからゲシュタルト心理学へ(村田憲郎) 133
コラムII 意志と行為の構造化(直江清隆) 153
第2章 心の科学・心の哲学・身体の現象学――内観・行動主義から心と身体への展開(長滝祥司) 161
第3章 認知システムと発達の理論展開――他者論から現代発達研究へ(柴田健志) 251
コラムIII 心の理論パラダイムと発達研究(内藤美加) 305
第4章 心理学の哲学を基礎づけたもの――その認識論的背景と現象学的心理学(渡辺恒夫) 319
コラムIV 現象学的精神医学の興隆と衰退(渡辺恒夫) 413
第5章 認知神経科学と現象学――身体と自己の起源を探る潮流(田中彰吾) 427
第6章 心理的なるものを超えた心理学――歩く・食べる・眠るの心理学へ(染谷昌義) 523
あとがき(渡辺恒夫) 633
主要人名索引 [vi-xi]
事項索引 [i-vi]
『飲み・食い・書く』書評
獅子文六
(1961年11月15日刊行、角川書店、東京, 1 plate + 278 pp. → 目次)
【書評】※Copyright 2024 by MINAKA Nobuhiro. All rights reserved
飲み食いは人生そのもの
どこかで見たような書名ではあるが(笑)、ワタクシがこっそりパクったわけではない。60年も前にこのような本が出されていたことをつい最近になって初めて知ったわけで、それゆえ『読む・打つ・書く』との書名の類似は、罪深い “相同” ではなく、清廉潔白な “非相同” でございます。ワタクシは無実だー。
実を言えば、獅子文六という作家の本を手にしたことはワタクシはかつて一度もなかった。本書『飲み・食い・書く』は徹底的に食と酒の自分史本で、幼い頃から晩年に至るまで、何を食ってきたか、何を呑んできたかが連作エッセイから見えてくる。歳をとるとともに著者の食と酒の嗜好が変わってくることも正直に書かれている。飲み食いは人生そのもの。横浜で生まれ育ち、のちにフランス留学を経験した著者は、日本料理・欧風料理(フランス・ドイツ)・中華料理(今の横浜中華街)の食文化のちがいとその歴史的背景に関心を向ける。それにしてもこのお酒の呑み方(量)はアカンやろ。胃潰瘍になるのもむべなるかな。
太平洋戦争後、愛媛の宇和島に疎開していた著者は伊予料理に接する機会が増える。「要するに、その土地で食うものを食え」(p. 88)という教訓は、風土ごとに異なる食文化と食生活を楽しむ著者の姿勢を物語る。
本書「あとがき」の〆のくだりは、食と酒に対する著者の向き合い方を読者に示している:
「しかし、いい年をして、飲み食いの本を出すなんて、多少、気がヒケないでもない。もう、いくらも飲めないし、いくらも食えないのである。もっとも年をとったおかげで、わかる味というものもあるが、ほんとは、黙って飲み、黙って食うのが、一番なのである」(p. 278)
著者が本書を出したのは68歳のときだから、来春ワタクシが “飲み食いの本” を出す頃には歳の差はほぼなくなる。そういう本を出すことについて、まったく “気がヒケ” ることのないワタクシはまだ修行が足りないのかもしれない。
最後に、『飲み・食い・書く』の造本について —— ワタクシが手にした初版は函入りの堅牢なハードカバー本で、ほぼ正方形の変型判だ。函と表紙の挿絵もいい感じだが、見出しに使われている活字の字体がとても変わっていて、ほかでは見たことがない。本書は後に角川文庫のラインナップに入り、『獅子文六全集(全16巻)』にも所収されているという。しかし、たとえ本文のテクストが別の本に移せても、この造本と活字書体までは移せないだろう。原書を撫で回すひそかなシアワセをワタクシは黙って味わっている。
三中信宏(2024年11月8日公開|2024年11月11日加筆|2024年11月14日修正)
『研究者、生活を語る——「両立」の舞台裏』感想
岩波書店編集部(編)
(2024年10月18日刊行、岩波書店、東京, x+252 pp., 本体価格2,400円, ISBN:978-4-00-061661-4 → 目次|版元ページ)
それぞれの研究者に降りかかる人生の現実問題への対処(本書では「育児」と「介護」が中心となる)を知る上で良書。
ある研究者は「どの分野にも、次から次へと輝かしい業績を叩き出す研究者がいるが、決して視界に入れてはいけない。万が一、目に入ってしまったら、幻影だと思おう」(p. 137)と言う。「家事や育児の任務を負わない人と同じ土俵で戦おうとすること自体、狂気じみている。競争心はかなぐり捨てなさい」(同)が師の教えとのことだ。個々の研究者ごとに取り巻く事情はさまざま。
身近に “ロールモデル” はいないかもしれない。しかし “嵐” の年月が通り過ぎて振り返れば、自分自身が “ロールモデル” になっているかもしれない。ここでいう “ロールモデル” とは「スーパーマン/スーパーウーマン」ではけっしてない。
本書は、自分が進むべき道を研究者自身が切り拓く前著:岩波書店編集部(編)『アカデミアを離れてみたら——博士、道なき道をゆく』(2021年8月4日刊行,岩波書店,東京, viii+238 pp., 本体価格2,000円, ISBN:978-4-00-061483-2 → 目次|感想|版元ページ )の “姉妹編” に位置づけられるだろう。
リアルな研究者人生を語るこの二冊はどちらもタイムリーな出版だとワタクシは思う。
『研究者、生活を語る——「両立」の舞台裏』目次
岩波書店編集部(編)
(2024年10月18日刊行、岩波書店、東京, x+252 pp., 本体価格2,400円, ISBN:978-4-00-061661-4 → 版元ページ)
【目次】
はじめに v
1 疾風怒濤の乳幼児期──育児編 I
国際遠距離を乗り越えて──研究者としてのキャリアと家庭生活[渡辺悠樹] 2二児の母のワンオペ育児・研究クエスト[髙橋由紀子] 9
タイミングをめぐる私たちの選択──出産・育児と研究のはざまで[大平和希子] 17
分担し、外注しながら研究する生活[前田健太郎] 27
研究者夫婦の常識的日常[小澤知己] 33
助けられて、助けられて、とにかく続ける[神谷真子] 39
おさるのジョージと黄色い帽子のおじさんのような生活[別所–上原学] 45
3歳児の「親」になって──激変した生活と研究[標葉隆馬] 51
海外で4人の子育てをしながら研究をするということ[中野亮平] 61
シングルファザーから時差同居生活へ[吉田紅] 69
ゆっくり急げ──みんなで遠くまで行こう[小町守] 76
やれるところまでやってみる──綱渡りをつづけて[榊原恵子] 84
2 そして子育てはつづく──育児編 II
仕事も暮らしも楽しくまわす[丸山美帆子] 92男性育休・育児のロング・アンド・ワインディング・ロード[田中智彦] 101
出産から海外フィールドワーク、そして非常勤の日々──子どもと歩む研究生活[金城美幸] 112
「逆転」生活からみた世界[佐田亜衣子] 119
研究者、育てられながら親になる[安部芳絵] 125
波乱と混乱の生活記録──3人の子を育てつつ[谷口ジョイ] 132
50代半ばの大学教授の平凡な一日[白木賢太郎] 140
3 〈インタビュー〉巣立ちのあとで──育児編 III
「人それぞれ」の国、アメリカでの子育て──村山斉さんに聞く 148「仕事より家族が大事」であっていい──田島節子さんに聞く 156
4 その日は突然やってくる──介護・病気編
子どもに返っていく母と──「同居」から「介護」へ[たねをまく子(仮名)] 172せん妄になった父との一年[源城かほり] 180
遠隔地介護と育児のダブルケア体験記[福山隆雄] 186
医療的ケア児との生活と研究[中村聡史] 192
「ポスドク一万人」世代の苦悩──たび重なる試練をくぐって[中野(小西)繭] 204
在宅介護・16年と3カ月[本村昌文] 211
終章 〈インタビュー〉ケアをしながら働くということ
ケアとジェンダー、そして権力──山根純佳さんに聞く 222働き方は変わるのか──藤本哲史さんに聞く 235
巻末付録 その後のこと 245
『進化論の知られざる歴史——ダーウィンとその〈先駆者〉たち』目次
レベッカ・ストット[高田茂樹訳]
(2024年10月25日刊行、作品社、東京, 本体価格3,600円, ISBN:978-4-86793-046-5 → 版元ページ)
書評依頼本。原書が出たのは十年あまり前のことで、すでにワタクシの手元にある:Rebecca Stott 『Darwin's Ghosts: The Secret History of Evolution』(2012年6月刊行, Spiegel & Grau, New York, xviii+396 pp., ISBN:978-1-4000-6937-8 [hbk] → 版元ページ)。
【目次】
まえがき 7
第1章 ダーウィンのリスト――一八五九年 ケント 15
第2章 アリストテレスの目――紀元前三四四年 レスボス 37
第3章 ジャーヒズの信心深い好奇心――八五〇年 バスラとバグダッド 65
第4章 レオナルドと陶工――一四九三年 ミラノ、一五七〇年 パリ 89
第5章 トランブレーのポリプ――一七四〇年 ハーグ 121
第6章 カイロの領事――一七〇八年 カイロ 149
第7章 哲学者たちの館――一七四九年 パリ 179
第8章 地下のエラズマス――一七六七年 ダービシャー 213
第9章 パリ植物園――一八〇〇年 パリ 247
第10章 海綿の哲学者――一八二六年 エディンバラ 2281
第11章 スコットランドの啓蒙主義者――一八四四年 エディンバラ 311
第12章 アルフレッド・ウォーレスの熱に浮かされた夢――一八五八年 マレー群島 347
後記 379
付記 「種の起源に関する考えの最近の進展の歴史的概観」チャールズ・ダーウィン 383
謝辞 395
原注 [435-399]
参考文献 [452-437]
索引 [468-453]
訳者あとがき 470
『アブダクション:仮説と発見の論理[新装版]』目次
米盛裕二
(2024年9月27日刊行,勁草書房,東京, xiv+267+v pp., 本体価格2,800円, ISBN:978-4-326-15393-0 → 版元ページ)
旧版:米盛裕二『アブダクション:仮説と発見の論理』(2007年9月20日刊行,勁草書房,東京, xiii+255+v pp., 本体価格2,800円, ISBN:978-4-326-15393-0)の新装復刻版。今井むつみの解説記事「科学的思考の究極の熟達が「ひらめき」を生む──新装版に寄せて」が巻末に付されている。本体価格据置きに驚いた。
【目次】
まえがき i
第1章 アブダクションと探究の論理学 1
1 三つの推論と論理学 22 パースの「探究の論理学」 6
3 論理学とは何か 13
4 規範科学としての論理学 20
第2章 分析的推論と拡張的推論 29
1 分析的推論とは 292 拡張的推論とは 33
3 仮説の発見 36
4 ケプラーの発見と遡及推論 41
5 科学的想像力を支える推論 45
第3章 アブダクションの推論の形式と特質 53
1 「説明仮説」の形成 532 アブダクションの推論の形式と特質 60
3 閃きと熟慮から成るアブダクション 66
4 パースの進化論的思想 72
第4章 帰納とアブダクションはどのように違うのか 81
1 二つの拡張的推論 812 帰納とアブダクションの違い 83
3 「帰納的飛躍」と「仮説的飛躍」 90
4 パースによる四つの理由 95
5 仮説の種類 98
第5章 科学的探究における帰納とアブダクション 103
1 科学的探究の三つの段階 1032 「アブダクティブな観察」と「帰納的観察」 108
3 仮説演繹法との違い 111
4 パースの帰納の概念 118
5 帰納の自己修正的な性質 124
第6章 帰納主義の考え方について 129
1 仮説と帰納 1292 ベーコンの帰納法の考え方 136
3 ミルの帰納法の考え方 144
4 仮説が事実をつくる 154
第7章 W・ニールの「仮説的方法」 163
1 「一次的帰納」と「二次的帰納」 1632 普遍的立言と単称的立言 168
3 ニールの「仮説的方法」の難点 171
4 アブダクションとニールの仮説的方法の違い 173
5 一次的帰納と二次的帰納の確率 179
第8章 G・ポリアの「発見的推論」 185
1 数学における発見 1852 発見的三段論法の考え方 190
3 発見的三段論法とアブダクション 199
付章
反デカルト主義的論考――言語の問題をめぐって 207常識知について 231
科学的思考の究極の熟達が「ひらめき」を生む──新装版に寄せて[今井むつみ] 257
索引 [i-v]
『飲み・食い・書く』目次
獅子文六
(1961年11月15日刊行、角川書店、東京, 1 plate + 278 pp.)
[目次]
口絵写真(1 plate)
わが食いしん坊 8
昨日の美味は今日の美味にあらず 17
一番食べたいもの 21
*
アジの味 26煮ざかな 29
東京のフグ 31
どぜう 33
おでん 37
枝豆 40
きのこ料理 41
ナマコとタワラゴ 44
貝鍋 47
塩汁 49
フグの腸 51
蟹 52
麸 53
豆腐の問題 55
生キャベツ 56
バナナの皮 59
焼きサーディン 64
汽車辨當 67
信州の洋食 68
鉢盛料理 73
冷さつま 79
西南食物誌 80
早春味談 85
水飯 88
雜煮 90
黄檗料理 92
*
國產洋酒 100アルコール無き酒 100
酒と餅 101
サケ 103
キルシ 105
カストリ學 108
シャンパン談義 110
サイダー談義 112
タダ飲み正月 114
安兵衛 118
泥醉懴悔 122
ビールと女 127
*
トンカツ談義 136パリの喫茶店 138
魚食い 139
パリを食う 145
春菜 150
野菜洋食 154
惣菜洋食瑣談 158
パリの日本料理 162
ポール軒 166
タマール 177
MARTY 181
*
故郷横濱 186西洋亭 196
南京料理事始 200
熱いタオル 202
本町の今川焼 205
ドロップス 208
洋食と母 210
*
畳と飯 214砂糖の用い方 222
辻留主人著『御飯の手習』の序 228
細君料理 230
料理とセックス 232
夜明かし屋 236
牛屋のネーサン 239
二人の中國料理人 242
*
私の食べ歩き 248わが酒史 268
あとがき 278
『中世の写本の隠れた作り手たち——ヘンリー八世から女世捨て人まで』目次
メアリー・ウェルズリー[田野崎アンドレーア嵐監訳|和爾桃子訳]
(2023年12月25日刊行、白水社、東京, 8 color plates + 289 + 69 pp., 本体価格5,000円, ISBN:978-4-560-09386-3 → 版元ページ)
こういう本には書店で必ず袖を引かれる。
【目次】
カラー口絵(8 pp.)
はじめに 9
プロローグ 羊皮紙錬成 26
第1章 発見 33
第2章 惨事すれすれ 60
第3章 写本の注文主(パトロン)たち 88
第4章 画工(アーティスト)たち 118
第5章 写字生と書記たち 145
第6章 写字生と著者の関係 180
第7章 隠れた著者たち 212
エピローグ 写本の衰退 250
あとがき 過去の使用と誤用 255
謝辞 267
年表 271
監訳者あとがき 281
用語集 [61-69]
図版一覧 [57-60]
文献目録 [35-56]
原註 [10-34]
索引 [1-9]