『生物系統学(第四刷)』

三中信宏

(1997年12月15日第一刷刊行/1999年10月15日第二刷刊行(正誤表)/2004年9月15日第三刷刊行(正誤表)/2012年8月第四刷刊行予定, 東京大学出版会ナチュラル・ヒストリー・シリーズ], 東京, xiv+458 pp., 本体価格5,600円(第四刷5,800円), ISBN:4130601725コンパニオンサイト目次版元ページ

実に8年ぶりに増刷がかかる『生物系統学』をバグ取りかたがた読み返してみると,「うわー,こんなこと書いてたかー」という箇所がちらほら見つかる.自分の書いた本とはいえ,15年も経てば細かいところなんかきれいに忘れてる(おい).たとえば,「プロローグ」の最後で,「私のような国立研究所研究員は、大学などの研究教育機関とは異なり、ともすれば研究上の話し相手にもこと欠くことがまれではありません。日常化した精神的な閉塞と幽閉から脱却するため」とか.ふつう書かないわなぁ……(しみじみ回顧).確かに,身分的にはひとつの研究機関に「所属」してはいたのだが,実際の仕事は「所外」でやっていたし.所属してもそこにはいないようなものだったし.思い起こせば,この本を書いていた五年間(35〜39歳)は,何を書いていたかを「なかのひと」の誰にもいっさい見せていなかった.見せる必要がなかったということ.ある日,できあがったブツを所に提出して,それでおしまい.「研究者の系統関係は研究組織の壁とは無関係なので好きにさせてもらいます」と所内の成績検討会や設計会議あたりでぶち上げていたのもこのころだった.独法研究所は霞ヶ関からの組織再編圧力で「壁」の仕切り直しが絶え間なく,よどみに浮かぶうたかたは,かつ消えかつ結びて,久しくとどまりたるためしなし,世の中にある人とすみかと,またかくのごとし.その「宣言」は生きるすべでもあるわけで. —— ま,要するに昔も今も「天動説」だったというシンプルな結論.うんうん.