『随筆 本が崩れる』

草森紳一

(2005年10月20日刊行,文藝春秋[文春新書472],ISBN:4-16-660472-4版元ページ

厚めの新書だが,全体は3部構成:「本が崩れる」(pp. 11-152),「素手もグローブ:戦後の野球少年時代」(pp. 153-222),「喫煙夜話〈この世に思残すこと無からしめむ〉」(pp. 223-309),最後に池内紀による「【跋】やわらかい本」(pp. 311-318).

 

“随筆”という枕詞がミソでしたなあ.この“路上観察”的な写真の数々は,それだけでも十分に見物だ.ちょっとばかしタイムスリップしたみたいなレトロで露悪的な雰囲気を感じる.物理現象としての“本の山の崩壊”はひとりの人生のすべてを背負っているということか.著者も言うように(pp. 33 ff.),「資料もの」をやりだすととめどなく本が増えてしまうというのは確かだと思う.

 

ただし,第1章「本が崩れる」だけを読めばもう十分で,後半の150ページあまりは読むまでもないかなって感じ.※この著者,大著『荷風永代橋』(2004年12月刊行,青土社ISBN:4791761618)を書いた人だったんだ.