『眼の冒険:デザインの道具箱』

松田行正

(2005年4月30日刊行,紀伊国屋書店ISBN:4314009829



朝日の新聞書評で見て以来,ずっと気になっていたのだが,現物に遭遇する機会がなかった.先日,東京堂書店でたまたま見かけたのが幸いだった.デザイナー的な図像学エッセイ.モホイ=ナジとかさまざまなアヴァンギャルド運動とか.まずは第1章「直線の夢」.おお,ネットワーク系統樹とか,ナチ党大会映画とか,WTC追悼式典とか.すべては「線」が織りなすアイコンとして.視るべし読むべし.

第2章「面の愉しみ」を読了.本の装幀における“周辺重視主義”とか(あるある),透明人間の系統図.マルセル・デュシャンの思想系統ネットワークが大きく描かれている.イメージや想念を系譜として図式化するのはとても刺激的.「奥行き反転」の錯視は多次元立方体の低次元射影ではよく体験する.系統ネットワークの常用患者は,日頃から錯視とか立体視とか幻視(ウソ)の鍛錬を積む必要があると思う.※常人では見えない“もの”を視る必要があるのだから.

第3章「形のコラージュ」.ジョアン・ミロの“画像パーツ図鑑”が圧巻.これらを組み合わせるとああいう絵になるのか.対するベルティヨンの人体パーツのコレクションは不気味.第4章「数字・文字・暗号・シンボル」.フォントの起源,読めない漢字,浮かぶメッセージ.「! と ?」の成立は目ウロコ.第5章「見ること・見られること」.視線の動き方のパターンと地震計の針の振動の類似性(?).

—— 目を遊ばせるには格好の本です.