『民族昆虫学:昆虫食の自然誌』

野中健一

(2005年11月16日刊行,東京大学出版会ISBN:4130601857



単に「蟲を喰う本」ではなかった.“ethnoentomology”と銘打つだけの意気込みが感じられる.「人間-自然関係」を民族生物学として考察しようという本.※ナチュラル・ヒストリー・シリーズにはこの手の本が率として高い.




【目次(詳細)】
はじめに−−「民族昆虫学」が目指すもの i

第1章 民族昆虫学の視点と方法 1
 1.1 人間と昆虫との関わりを研究するために 1
  (1) 応用昆虫学 1
  (2) 文化昆虫学 3
  (3) 民族昆虫学 3
 1.2 役に立つ昆虫の研究 7
 1.3 昆虫食への注目 9
 1.4 本書の研究方法 13

第2章 アフリカ−−民族の生活と昆虫 18
 2.1 南部アフリカの人々と昆虫との関わり 18
 2.2 南部アフリカの昆虫利用とその差異 20
  (1) 多様な民族とさまざまな利用 20
  (2) 食用 24
  (3) 病気治療 29
  (4) 美容品 31
  (5) 狩猟道具 31
  (6) さまざまな日用品 33
  (7) 子どもの遊び道具 33
  (8) 祈願・占い 36
  (9) 害虫駆除 37
  (10) 地域および民族間の比較 37
  (11) 近代化にともなう変化 39
  (12) 身近な存在としての昆虫との関わり 40
 2.3 サンの食生活と昆虫食 41
  (1) 砂漠の民と昆虫食 41
  (2) 食用昆虫の種類 46
  (3) 獲得活動 48
  (4) 食材としての昆虫 54
  (5) 食生活での位置付け 62

第3章 東南アジア−−多様性を利用する 66
 3.1 東南アジアの人々と昆虫との関わり 66
 3.2 東南アジア大陸部の昆虫食 70
  (1) 「エコトーン」地域と昆虫 70
  (2) 昆虫食の地域性 71
  (3) 獲得活動 74
  (4) 市場販売 83
  (5) 食べ方 89
  (6) 近代化にともなう変化 93
  (7) 多面的な資源利用への組み込み 96
 3.3 サゴヤシ地帯のオサゾウムシ食 97
  (1) サゴヤシ地帯とサゴムシ 97
  (2) インドネシアのスラウェシ・マルク地方のサゴムシ食慣行 98
  (3) 獲得活動 99
  (4) 食べ方 101
  (5) サゴムシの食用慣行の成立条件 104
 3.4 チョウ採集の始まった雲南地域の村 107
  (1) 装飾品に使われるチョウ 107
  (2) 採集の始まりと変遷 109
  (3) 採集の技術と場所 110
  (4) 資源化に対する社会的規制 111
  (5) 資源化のプロセスと地域社会 112
 3.5 カブトムシの闘い 113
  (1) タイ北部のカブトムシ・レスリング 113
  (2) チョン・クワン大会 114
  (3) 闘うカブトムシの入手と育成 117
  (4) 闘いを介した結びつき 120

第4章 日本−−地域の生活との結びつき 121
 4.1 日本の人々と昆虫との関わり 121
 4.2 民族昆虫学と『昆虫世界』 126
  (1) 『昆虫世界』誌と主催者名和靖 126
  (2) 害虫駆除を通して見た人々の昆虫観 128
  (3) 在野からの情報収集とその成果 131
  (4) 民族昆虫学史への位置付け 134
 4.3 昆虫食の差異 136
  (1) 中部地方におけるクロスズメバチ食慣行 136
  (2) クロスズメバチの食用とその地域分布 139
  (3) クロスズメバチの獲得方法とその地域分布 144
  (4) 食用と獲得との関係 150
  (5) クロスズメバチ食慣行の地域差 153
 4.4 オオスズメバチの獲得 154
  (1) オオスズメバチの獲得と食用慣行の外観 154
  (2) 愛知県西三河山間部における慣行の実態 157
  (3) 捕獲技術の検討 162
  (4) 慣行を支える地域条件 171
  (5) 人々と自然をつなぐ慣行 176

第5章 ナチュラルヒストリーとしての民族昆虫学 177
 5.1 身近な存在であること 179
 5.2 周辺的資源であること 181
 5.3 伝統的に築かれてきた在来知識 182
 5.4 「人間-自然関係」の学問 184

引用文献 187
おわりに 195
索引 199