『文明のなかの博物学:西欧と日本(上・下)』

西村三郎

(1999年8月31日刊行,紀伊國屋書店ISBN:4314008504 / ISBN:4314008512



【目次】
〈上巻〉
序 章:博物学と人間社会
第1章:ヨーロッパ大博物学時代
     時代を席巻した博物趣味
     二人の啓蒙家
     リンネの名声−その実像
     植物の〈性体系〉
     自然の体系化へ向けて
     リンネ派博物学の展開と波及
     社会の各層を巻き込んで
     『一般と個別の自然誌』−記述の精神
     "近代人"ビュフォン
     人間が中心
     さながら文学
     ビュフォンにおける〈理論〉の意義
     歴史的視点の導入−自然史の成立
     文人ビュフォン
     科学の文体をめぐって
     科学の大衆化、大衆レベルへの浸透
     国境と海を越えて
     栄光に包まれた晩年
     志を継ぐ人々
     博物学は民衆の学問
     大探検時代−異国の博物へのあこがれ
     絢爛と花ひらいたエキゾチック博物学
     "草の根"で大流行

第2章:花ひらく江戸の博物学
     〈徳川の平和〉
     本草学・博物学・博物趣味
     「格物致知」−朱子学の立場
     『本草綱目』の舶来
     本草学と名物学
     啓蒙的・実学的書物の刊行
     本草学分野での動き
     『大和本草』−日本発の土着の博物書
     物産学の興隆
     物産会−人をつなぐネットワーク
     戸田旭山の薬物会
     第五回東都薬品会−源内の面目
     夢に終わった大計画
     庶民から大名まで
     〈殿様博物学〉の世界
     博物図譜制作にかけた情熱
     ヴィジュアル文化の爛熟の中で
     民衆のあいだの博物学エネルギー

第3章:本草博物学の淵源をたずねて
     東アジア世界における本草学の伝播
     薬物と人間
     中国本草学の起源
     『神農本経』の内容をめぐって
     中国本草学、その後の発展
     『本草綱目』−時代の新しい要請に応えて
     その他の博物学的伝統−『爾雅』から物産誌まで
     外来の学問としての本草学−日本の場合

第4章:西欧博物学の成立
     東と西−両博物学の基本的性格
     ルネサンスの新しい息吹
     古代西方世界における本草学の展開
     古代文明の灯を守るもの
     中世の帳をあげて
     珍品収集熱の流行
     目録の作製と刊行

第5章:西方世界における博物学的知の流れ
     西欧博物学の淵源−古代ギリシアの天才たち
     ギリシアの愛知からローマの実用へ
     古典文明のあとにきたもの−プリニウスの『自然誌』と動物寓話集の世界
     イスラムの蔭に
     新しい動きと課題
     ルネサンス博物学を彩る百科全書的知の巨人たち
     ドドエンスと同時代の植物研究者たち
     十七世紀の時代相のもとに−レイとトゥルヌフォール

後 注

〈下巻〉

第6章:博物学の黄金時代を招来したもの
     社会史・文明史の立場から
     〈危機の世紀〉から〈白銀の世紀〉へ
     コーヒーハウス文化の勃興の中で
     西欧園芸趣味−その由来と影響
     〈性体系〉=宗教心にもかなった新学説
     ビュフォンの先行者たち
     江戸期日本における流行を準備したもの
     俳諧熱の高まりとその余波
     園芸作品への熱いまなざしのなかで
     博物学−博物趣味の流行と文明

第7章:西欧−博物学から近代生物学へ
     学問の世界と一般社会
     自然分類の体系を目指して
     〈植物学の革命の書〉
     フランス革命博物学
     壮大すぎたスペキュレーション
     大理論のたそがれ
     フランス博物学の黄金時代到来す
     プロとしての科学研究者の誕生
     動植物界体系化の新たな発展
     近代生物学の成立と博物学黄金時代の終焉

第8章:変容する江戸博物学
     『本草綱目啓蒙』−江戸博物学の総決算
     西洋博物学の受容をめぐって
     ケンペルとツュンベリー
     個物をめぐり江戸博物学は踊る
     宇田川家三代の業績
     『厚生新編』と『遠西独度涅烏斯草木譜』−江戸期の二大翻訳事業
     鎖国の閉塞状況のもとで
     シーボルトの来日
     『泰西本草名疏』−リンネ体系の紹介
     〈弁物〉から〈舎密〉−宇田川榕庵の主張
     『草木圖説』−飯沼慾斎の近代植物学実践

第9章:江戸博物学から明治の生物学へ
     幕末と維新の激動のなかで
     教育体制の整備とともに
     田中芳男−大車輪の啓蒙活動
     近代的高等教育の濫觴−お雇い外国人教師の貢献
     ドイツ学派とアメリカ学派−明治期の学問における二つの流れ
     近代的動植物学の研究教育体制確立へ向けて
     学会の結成
     江戸博物学の残照のなかで

第10章:西と東の博物学
     西欧近代文明の世界制覇
     理論もしくはドグマとしての西欧博物学
     体系よりも個物−東洋本草-博物学の立場
     実用分類と客観分類
     人間の精神活動と東西両博物学の性格
     創造か生成か?
     呪術的世界観
     人間中心の社会と神中心の社会
     原理的・論理的思考を培ったもの
     論理的思考法と科挙制度−中国の場合
     原理的・論理的思考法の源泉
     東アジアにおける原理的思考−その超越的観念性
     自然法則と倫理規範
     江戸期日本における古楽派の意義
     〈停滞〉の社会と〈進歩〉の社会

終 章:来たるべき時代に

後 注
東西博物学小年表
あとがき
書名索引
人名索引