『本文の生態学:嗽石・鴎外・芥川』

山下浩

(1993年6月18日刊行,日本エディタースクール出版部ISBN:4888882061



【目次】

序章:「本文[テクスト]」は生きている 1

 漱石はいつも「吾輩」と書いたか 1
 漱石は用字にむとんちゃくであったか 3
 「漱石的表現」 5
 漱石の速筆 9
 誤記とみまちがう「漱石的表現」 11
 変形されていく本文 20
 たちおくれている日本の本文批評 22
 「本文批評」を活性化させるために 25
 本文編集上の問題点 27
 本文校訂の方法 31

I

1章:『漱石全集』の本文を考える−−『吾輩は猫である』を通して 43

 岩波版『漱石全集』と集英社版『漱石文学全集』 43
 初出『ホトトギス』本文の高い信頼度 45
 「吾輩」「我輩」「余」「余輩」 50
 初版の低い信頼度 54
 岩波版『漱石全集』の問題点 59
 集英社版『漱石文学全集』の問題点 63
 『猫』の本格的な校訂のために 66

2章:印刷工程に起因する本文異同−−『吾輩は猫である』『坊っちゃん』を通して 70

 印刷所と組版作業 70
 『坊っちゃん』の文選工と造本過程 74
 文選工各々の特性と誤植例 79
 『猫』の文選工と『坊っちゃん』とのかかわり 85

II

3章:底本選定のあり方を考えるーー森鴎外舞姫』を通して 93

 『舞姫』の版本とステマ 93
 「水平」な改訂と「垂直」な改訂 96
 本文異同の原因 98
 各版の底本としての適否 100

4章:本文批評と校訂の実際−−芥川龍之介羅生門』を通して〔山口浩行との共同執筆〕 110

 『羅生門』各版とその相互関係 112
 句読点について 119
 句読点の異同 121
 行末の調整と「ぶら下げ」 126
 それ以外の問題点 129
 『鼻』版における異同 133
 グレッグ理論に拠る実験的本文 136
 異同表 150

書誌 159
あとがき 161