『センセイの書斎:イラストルポ「本」のある仕事場』

内澤旬子

(2006年5月30日刊行,幻戯書房ISBN:4901998161目次



見開き2ページのイラストと2ページの文章で1セットになっている(いま目次をチェックしたら.後半は割当ページ数が増えている).長期にわたる雑誌連載の単行本化なので,金田一春彦千野栄一,そして米原万里のような物故者も含まれている.スタイルとしては,数年前に出た磯田和一『書斎曼荼羅:本と闘う人々』(全2冊,2002年3月15日刊行,東京創元社ISBN:4488014208 / ISBN:4488014216)に似ているが,今回の新刊の方がもっと細密画だ.さらにさかのぼれば,かつての“妹尾河童”的な覗き鳥瞰スタイルの系譜に連なるのかな.

細密イラストを歩き読みするのは目が疲れるが,後半になるとともにどんどん「濃く」なっていくぞ.ほとんど“Wunderkammer”のごとき書斎が次々と登場する.ご,五万冊ですか〜.脱帽っす.それにしても,みなさん,それぞれに「本との格闘」が日々繰り返されているようで.

—— さて,自分の書斎は(研究所の)と振り返ってみると,単に「堆積」しているだけで,ごくローカルにしか体系化されていないし,さすがに千切られたり欠片になったりこそしていないものの,本たちが日々流動していることはまちがいない.茨城県南部をときどき揺さぶる地震のたびに少しずつ端から崩落している箇所もある.

この本を読んでも,最終解決策がひらめくわけではけっしてない.千野栄一のように「サティアン」をいくつか分散させるという手もあるのだろうか(根本的解決にはならないが).むしろ,このままかな.腕力がなくなってきたら,柳瀬式の“辞書逆立ち置き”をぜひ実践してみよう.