『系統樹思考の世界:すべてはツリーとともに』

三中信宏

(2006年7月20日刊行,講談社[現代新書1849],296 pp., ISBN:4061498495



【詳細目次】

プロローグ:祖先からのイコン――躍動する「生命の樹」 11

 第1節:あれは偶然のことだったのか…… 13
 第2節:進化的思考――生物を遍く照らす光として 15
 第3節:系統樹的思考――「樹」は知の世界をまたぐ 19
 第4節:メビウスの輪――さて,これから彷徨いましょうか…… 28

第1章:「歴史」としての系統樹――科学の対象としての歴史の復権 33

 第1節:歴史はしょせん闇の中なのか? 35
  多様性をいかに体系化するか
  典型的な自然科学の五基準
  歴史は科学ではない?
  科学の基準そのものを変える
  歴史を論じる科学は可能か?
 第2節:科学と科学哲学を隔てる壁,科学と科学を隔てる壁 48
  「科学の基準」は一枚岩ではない
  「学問分類」と「学問系譜」とは異なる
  ローカルな科学哲学を求めて
 第3節:アブダクション:真実なき探索――歪んだガラスを覗きこむ 55
  仮説の「真偽」は必ずしも判定できない
  推論様式としての「演繹」と「帰納
  データに照らして仮説を選ぶ
  第三の推論様式−アブダクション
 第4節:タイプとトークン――歴史の「物語」もまた経験的にテストされる 66
  ダーウィンはどんな本を読んでいたか
  「物語」としての説明
  歴史はレトリックにすぎない?
  タイプとトーク
  天体物理学にも物語的説明はある
  あれも科学,これも科学……

第2章:「言葉」としての系統樹――もの言うグラフ,唄うネットワーク 83

 第1節:学問を分類する――図像学から見るルルスからデカルトまで 85
  絶対的な学問分類はない
  図形言語としての「鎖」と「樹」
  げにおそるべきは分類なり
 第2節:「古因学」――過去のできごととその因果を探る学 95
  “歴史”研究の共通の方法論
  ヒューウェルの「古因学」
 第3節:体系学的比較法:その地下水脈の再発見――写本,言語,生物,遺物,民俗…… 104
  歴史推定のための「比較法」
  比較文献学から比較言語学
  時間的変化と空間的変化
 第4節:「系統樹革命」――群思考と樹思考,類型思考と集団思考 113
  現代生物学がもたらした“思考法の変革”
  ブンゾウ・ハヤタの動的分類学
  生きている科学理論とその系譜
  系統樹思考と分類思考
  系統樹革命のルーツ
  社会生物学論争における科学観の対立

インテルメッツォ:系統樹をめぐるエピソード二題 131

 第1節:高校生が描いた系統樹――あるサイエンス・スクールでの体験 133
  系統推定論への参道
  系統樹を描く高校生
  素朴な系統樹イメージ
 第2節:系統樹をとりまく科学の状況――科学者は「真空」では生きられない 143
  科学とは科学者がしていることである
  生物体系学の三学派
  「舞台上」で−スポットライトを浴びるマイアー,ヘニック,ソーカル
  「舞台裏」で−重なるレイヤー,絡まるネットワーク
  マイアーのもくろみ
  実はすれちがっていただけ?

第3章:「推論」としての系統樹――推定・比較・検証 161

 第1節:ベストの系統樹を推定する――樹形・祖先・類似性 163
  ベストの系統樹をどう見つけるか
  系統推定の手順
 第2節:グラフとしての系統樹――点・辺・根 168
  無根系統樹と有根系統樹
  祖先子孫関係は原理的に不可知である
  データ=ある形質の形質状態
 第3節:アブダクション,再び――役に立つ論証ツールとして 176
  AI研究がアブダクションを磨いた
  はてしない推論の連鎖
 第4節:シンプル・イズ・ベスト――「単純性」の美徳と悪徳 181
  目指すは“最良”の説明
  伝言ゲームでまちがって伝えたのは誰?
  写本系図のつくり方
  人間の基本的な思考形態に文理の区別なし
 第5節:なぜその系統樹を選ぶのか――真実なき世界での科学的推論とは? 189
  可能な系統樹の集合
  最適化基準のもとでベストを決める
  乗り越えられない計算上の「壁」
  しらみつぶしは無理
  発見的探索
  「系統樹の科学」に求められること

第4章:系統樹の根は広がり続ける 209

 第1節:ある系統樹的転回――私的回顧 211
  “本を学ぶ”,“本で学ぶ”
  読む以前に門前払い,そして……
 第2節:図形言語としての系統図 217
  ガレス・ネルソンのもたらしたもの
  系統樹の数学
 第3節:系統発生のモデル化に向けて 222
  ウェットな系統樹からドライな系統樹
  モデルとしての系統樹
  系統推定のゆくえ
 第4節:高次系統樹――ジャングル・ネットワーク・スーパーツリー 232
  ツリーは表現力に乏しい!
  ツリーか,ネットワークか
  ネットワーク推定の難しさ
  共進化の問題を系統ジャングルで解く
  系統スーパーツリーへ,さらにその先へ

エピローグ:万物は系統のもとに――クオ・ヴァディス? 251

 第1節:系統樹の木の下で――消えるものと残るもの 253
 第2節:形而上学アゲイン――「種」論争の教訓,そして内面的葛藤 257
 第3節:系統樹リテラシーと「壁」の崩壊 261
 第4節:大団円――おあとがよろしいようで…… 263

あとがき 267
さらに知りたい人のための極私的文献リスト [291-273]
索引 [295-293]