宮下志朗
(1998年10月22日刊行,みすず書房,ISBN:4622046601)
読了.19世紀前半のパリで,「文学」ないし「売文」で生計を立てることについて.ゾラやバルザックのパリでの文筆生活を取り上げながら,原稿料とか出版社との関係,文壇ライフなどなど.新聞連載小説が大流行し,パリ中にあったブッククラブでの貸本文化,そして書籍流通の末端に位置したブキニスト(古本屋)たち.
パリのアカデミーでキュヴィエとジョフロワが大論争した1830年代のパリは出版大不況時代だったそうだ.当時の文学者たちがいかにして出版業者と丁々発止の立ち回りをしてきたことか.彼らは単に“破滅的”に暮らしていたわけではなかったんだ.
後半は短いエッセイが中心.19世紀初頭のパリでは,女性が読書するという行為それ自体が後ろめたく罪深いこととみなされていたらしい.フロベール『ボヴァリー夫人』の主人公のように.