『哲学の歴史・第7巻:理性の劇場 カントとドイツ観念論【18〜19世紀】』

加藤尚武(責任編集)

(2007年7月10日刊行, 中央公論新社ISBN:9784124035247版元ページ



中央公論新社の創業120周年記念出版のシリーズ〈哲学の歴史〉が,今年4月以降,毎月10日に刊行されている.今月刊行の新巻は,第4回配本:加藤尚武(責任編集)『哲学の歴史・第7巻:理性の劇場 カントとドイツ観念論【18〜19世紀】』(2007年7月10日刊行, 中央公論新社ISBN:9784124035247版元ページ).これまでの巻と同じく新書とほぼ同じサイズだが,700ページ超というボリュームだ.「イメージの回廊」をざっとみて,ドイツ自然哲学の章に進む.Michael T. Ghiselin が Lorenz Oken の記事を書いているとは知らなかった.

哲学の全歴史を一望しようというこのシリーズは,各巻ごとの構成がうまく体系化されている.だから,分担執筆ではあるのだが,全体としてのまとまりが読者にわかりやすいようにつくられている.シリーズの各巻は時代ごとに切り分けられているが,それぞれの時代背景を図像でわからせる「イメージの回廊」をはじめ,年表やチャート,そしてコラムなどを随所に配することで,読者のための便宜を図っているのは,そういう編集方針の現われだろう.

これまでの配本をおさらいしておくと,第1回配本:飯田隆(責任編集)『哲学の歴史・第11巻:論理・数学・言語 科学の世紀と哲学【20世紀II】』(2007年4月10日刊行, 中央公論新社ISBN:9784124035285版元ページ);第2回配本:伊藤博明(責任編集)『哲学の歴史・第4巻:ルネサンス 世界と人間の再発見【15〜16世紀】』(2007年5月10日刊行, 中央公論新社ISBN:9784124035216版元ページ);第3回配本:松永澄夫(責任編集)『哲学の歴史・第6巻:知識・経験・啓蒙 人間の科学に向かって【18世紀】』(2007年6月10日刊行, 中央公論新社ISBN:9784124035230版元ページ).そして,来月8月10日刊行の第5回配本は,須藤調任(責任編集)『哲学の歴史・第9巻:反哲学と世紀末 マルクスニーチェフロイト【19〜20世紀】』と予告されている.

—— ついでながら,このシリーズのポータル・サイトはたいへんよくできていて,各巻の内容紹介(目次・執筆者など)だけでなく,そこで取り上げられている人名・事項索引まで置かれている.オンラインでこのサイトを読むだけでも十分勉強になってしまう.シリーズ企画全体の趣旨はもちろんのこと,各巻のコスト・パフォーマンスのよさといい,版元サイトの充実したサービスぶりといい,一出版社による文化事業としての社会貢献度はとても高いと思う.