『中国温泉探訪記』

桂博史

(2007年6月15日刊行, 岩波書店ISBN:9784000238403目次



第1章「中国温泉の謎――中国はいま,空前の温泉ブーム」と第2章「中国温泉の意味――知られざる温泉大国」を読む.中国本土の最近のリゾート温泉が,いわき市の旧〈常磐ハワイアン〉をモデルとしてつくられていることを始めて知った(ただし“フラガール”は輸入されなかったようだ).しかし,この新興の行楽地感覚の温泉地(「度仮村」と呼ぶそうだ)は個人的には好みではない.むしろ“日式”が普及している台湾の温泉の方がなじみやすいかもしれない.

第3章「中国温泉の美学――皇帝に愛された温泉」と第4章「中国温泉の真髄 農村温泉へ――伝統的中国温泉世界を見る」を読了.中国風の温泉リゾート地を離れ,旅路はしだいに中国の奥深く分け入る.そこには古くからの混浴温泉があり,畑の中の野湯もある.なんだかほっとしてしまう.日本や台湾の温泉の大部分は“火山性”だが,中国大陸に湧く温泉はほぼすべて“断層性”のアルカリ泉だそうだ.随所で,彼我の温泉文化のちがいを読者は知ることになる.できればもっと詳しいマップがほしいところだ.