『パブリッシュ・オア・ペリッシュ:科学者の発表倫理』

山崎茂明(2007年11月29日刊行,みすず書房ISBN:9784622073345版元ページ

「適切なオーサーシップが不正行為の歯止めとなりえる」というあたりが興味を引く.もうひとつ,「パブリッシュ・アンド・ペリッシュ」ということばが見えるが,この“アンド”は意味深だ.

【目次】
まえがき v

第I部 なぜ発表倫理か



第1章 発表するか、それとも死か──パブリッシュ・オア・ペリッシュから特許で成功へ 2

パブリッシュ・オア・ペリッシュのはじまり
1950年代──大学の拡充と研究活動の強化
1960年代──研究志向の定着と研究情報の増大
パブリッシュ・オア・ペリッシュからパブリッシュ・アンド・ペリッシュへ
パブリッシュ・アンド・ペリッシュからパテント・アンド・プロスパーへ


第2章 公正な科学研究が私たちの生活を支える 18

社会は安全な情報と知識を求める
小さな政府からの転換、科学研究への規制
不正行為を定義する
ピアレビューへの疑問


第II部 発表倫理はいかに破られたか



第3章 求められたヒーロー──ベル研究所シェーン事件 28

研究者のスキャンダルか
研究倫理への関心は生物医学領域から
ベル研究所で発生したシェーン事件
シェーン事件の調査報告書
倫理ガイドラインの改訂
物理学界としての経験
事件をこえて


第4章 一番をめざす──Nature Medicine論文のねつ造 45

主要事件から学ぶ
オーサーシップから Nature Medicine 論文をみる
論文の助成機関をみる
実験ノート
筆頭著者Kの座右の銘は「精力善用、自他共栄」
研究室における教育・指導体制


第5章 私は不正な実験に関与していない──ES細胞ねつ造事件 57

劇的な変化
事件のはじまりは『ネイチャー』のソウル訪問記事
ファン教授グループの発表論文
発表論文数の年次変化
主要な発表誌は
ファン教授グループ論文で、最も多く出現する共同研究者と筆頭著者は誰か
コレスポンデンス・オーサーからみた『サイエンス』論文
オーサーシップの誤用/事件の教訓


第6章 成果へのプレッシャー──ポールマン事件 74

2000年の秋
どのようにして不正は見つかったのか?
バーモント大学の正式調査報告書
どのような妨害がなされたのか
偽りの研究データ
Annals of Internal Medicine 誌の論文撤回をめぐって
ポールマン博士と告発者の肉声


第III部 発表倫理を脅かすもの

第7章 インパクトファクターで研究者を評価できるか 92

研究評価とインパクトファクター
IFはどのように誕生したのか
インパクトという言葉、定義と問題
雑誌に含まれるレビュー論文の比率に注意
ゆがんだ被引用文献分布──平均値でよいのか、少数論文への集中
どのような誤用が存在するのか
編集者はIFを気にしている
JAMA編集委員長の見識とインパクトファクター


第8章 なぜ著者サインを偽造したのか 108

著者サインの偽造
告白の電子メール
学会誌への発表と撤回
学会誌編集委員会の対応
だれも本当の理由を尋ねてこなかった
誰のための医学研究なのか
教育機能の消失


第9章 なぜ私の論文が盗用されたのか──不正行為にはたす編集者の役割 118

不正行為への対応
COPEの発生
東京歯科大学教授の論文盗用事件と『日本医師会雑誌』の対応
臨床試験論文の撤回


第IV部 発表倫理をどう確立するか

第10章 オーサーシップ──著者になるのは誰か 130

ES細胞ねつ造事件への『サイエンス』編集委員長声明
論文生産量の変化と研究者の生産性
平均著者数の上昇
国際共著論文の増加
オーサーシップの定義が揺らいでいる
オーサーシップの厳格な適用は不正行為の防止につながる


第11章 レフェリーシステムを再構築する 140

1665年学術雑誌の創刊時を振り返って
近年のレフェリーシステムへの関心
レフェリーシステムを検証する
レフェリーシステムは完全なフィルターか
編集者・レフェリー側の倫理を問う
コレスポンデンス欄からラピッド・レスポンスヘ
開けブラック・ボックス


第12章 不正行為を考える──スキャンダル・アプローチでなく 154

『科学者の不正行為』出版までの道
不正行為元年──2005年
シェーン事件をめぐるテレビ番組
インパクトファクターをめぐる狂騒
大学を中心とした学術研究の未来


あとがき 161


初出一覧 163
参考文献 [viii-xiii]
索引 [i-vii]