田中純
(2007年11月26日刊行,東京大学出版会,ISBN:9784130101066)
500ページ近くある大著.「文化表象論」というのは,ぼくにとってはまだよくわからない研究分野だが,“表現型”としての文化を眺めるということなのだろうか.ただし,本書に関していえば,形態学(morphology)というキーワードのもとに表象を論じるというスタンスが立てられているようだ.関連して,反復説・進化論・生態学という言葉も目次には見える.“表現型”の奥にある“遺伝子型”への掘り下げ? あるいは,中谷礼仁『セヴェラルネス:事物連鎖と人間』(2005年12月23日刊行, 鹿島出版会, ISBN:4306044602 → 目次)の「都市系譜学」とのつながりもあるにちがいない.
→ 版元ページ.
【詳細目次】
序 i都市の詩学
第1章 都市の伝記――類型・類推・幼年時代 2
集団的記憶の場/自伝という死の訓練
第2章 「メタ世界」としての都市――アルド・ロッシの言葉なき建築 24
建築の「情念定型」/都市の徴候と索引
補論1 忘却の詩学、類推の書法――アルド・ロッシの言葉なき建築(続) 48
自伝の科学/「学校への道」の発見/幼年時代の建築
第3章 青天白日覓亡市――小村雪岱『日本橋檜物町』 77
雪岱の東京/地霊論光・闇・黄昏
第4章 自然の無関心――畠山直哉「都市とその起源」 100
「都市とその起源」/自然史的都市のフラジリティ
第5章 チマタのエロティシズム――映画による夕占 122
闇の官能化/連鎖的イメージという内言/黄昏の交通空間神話と科学
第6章 生者と死者のトポロジー――心の考古学(1) 142
ポリス成立のディアレクティカ/心の縄文時代
第7章 アハスウェルスの顔――心の考古学(2) 161
無意識都市のダイビング/ヒルコ,クエビコ,タニグクたちの夢
補論2 「時のかたち」の形態学 185
形態学と反復説/「ものの歴史」と進化論/かたちへのヘテロクロニー
第8章 装飾という群衆――神経系都市論の系譜 195
身体・イメージ空間の襞/室内装飾と神経科学/群集の回帰
補論3 神経系イメージ学へ 213
図像的転回の制度的条件/アビ・ヴァールブルクと症状の時間/イメージの徴候的知へ
第9章 都市のアニミズム――カミの原風景 227
類似の存在論/カミの空間構造/野生の都市遊戯の規則
第9章 犬の街――境界の叙事詩、森山大道『新宿』 242
都市の通過儀礼/犬としての写真家
第10章 狩人たちの物語――連歌としての路上観察 263
写真という仮説形成の場/魂鎮めとしての超芸術
第12章 都市という驚異の部屋――博物誌の知再考 282
「驚異」の修辞学/江戸の博物趣味と言語遊戯/廃墟の痙攣的な知景観の論理
第13章 無縁の根源――河原という魂の市庭 304
コンゲンカードの寓意/河原のケガレとハレ
第14章 方法の生態学――ダーウィン、ベンヤミン、宮本常一 325
都市の軟体動物/景観の通過者結び――郷愁と予感
第15章 都市の詩学――萩原朔太郎のステレオ写真 346
郷愁の玩具/近代という下り坂
註 371
跋 —— 波打ち際の知 423
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