『伝説の日中文化サロン 上海・内山書店』

太田尚樹

(2008年9月16日刊行,平凡社平凡社新書436],215 pp.,本体価格777円,ISBN:9784582854367目次版元ページ

大正から昭和にかけて上海の知識人や作家の間で有名だったという書店の伝記.こういう本屋一代記は心して手に取るように心がけている.海外だと,リン・ティルマン『ブックストア:ニューヨークでもっとも愛された書店』(2003年1月30日刊行,晶文社ISBN:4794965583)と W. G. Rogers『Wise Men Fish Here : The Story of Frances Steloff and the Gotham Book Mart』(1965年刊行,Harcourt, Brace & World,ISBN:なし)の2冊がまず思い浮かぶ.日本に目を向けても,古書店の伝記が多いようだ.書店を営むということは,さまざまな人が集まっては離れる“ハブ”を長年にわたって維持するということなのだろう.前半は,郭沫若魯迅谷崎潤一郎芥川龍之介.上海の租界に集散した人物は実にいろいろだ.後半は,魯迅を軸とする,日中の反体制派活動家が内山書店を拠点として入り乱れる.魯迅と内山書店との関わりはとても深かったという.現代では想像もできないが,“上海”(あるいは“台湾”)ということばは当時の日本人にとっては夢をかきたてる作用があったのだろう.