『生物にとって自己組織化とは何か:群れ形成のメカニズム』

スコット・カマジン,ジャン-ルイ・ドノブール,ナイジェル・R・フランクス,ジェームス・シュナイド,ギ・テロラ,エーリック・ボナボ著[松本忠夫・三中信宏共訳]

(2009年4月1日刊行,海游舎,東京,本体価格6,800円,xxiv+534 pp., ISBN:9784905930488版元ページ原書目次原書感想

【目次】
日本語版への序文(ナイジェル・R・フランクス) v
カラープレートの説明 xv
カラープレート xvii


プロローグ 本書の目的と意図 3


Part I 生物自己組織化の概論



1 自己組織化とは何か
  自己組織化の定義 9
  群れ活動におけるパターン 10
  生物学における自己組織化 13


2 いかにして自己組織化が働くか
  正のフィードバックと負のフィードバック 17
  どのようにして生物は情報を獲得し,それに基づいて活動するか 22
  正のフィードバック,スティグマジー,ゆらぎの増幅 26
  要約 27
  Box 2.1 負のフィードバック,正のフィードバック,そしてゆらぎの増幅 28


3 自己組織化システムの特徴
  自己組織化システムはダイナミックである 31
  自己組織化システムは創発的特性を示す 33
  パラメーターのチューニング 35
  生物学的および物理学的パラメーター 37
  自己組織化における創発的特性の意義 37
  単純な規則,複雑なパターン ―― パラドックスへの回答 40
  Box 3.1 ベナール対流 42
  Box 3.2 ロジスティック差分方程式の成長率パラメーターをチューニングする 43
  Box 3.3 ドミノ倒し:パラメーターのチューニングの例として 45


4 自己組織化に代わる説明
  秩序を生む別の道すじ 47
  リーダー,青写真,レシピ,テンプレート 47
  自己組織化に代案で説明できる生物例 50
  自己組織化に関係するアイデア 56
  要約 62


5 なぜ,自己組織化か
  自己組織化か,それ以外の手段か 65
  要約 69


6 自己組織化の研究
  実験的な研究 71
  厳密なモデルの定式化 71
  自己組織化されたシステムの特定のモデル 74
  それぞれのモデルの長所と短所 81
  Box 6.1 セル・オートマトンモデル ―― その内容と実例 82
  Box 6.2 StarLogo ―― 分散化された過程をシミュレートするプログラム言語 87


7 自己組織化についての誤解 88


Part II 事例研究



8 粘菌とバクテリアにおけるパターン形成
  単細胞生物におけるパターン形成 95
  多細胞集合の適応的意義 100
  自己組織化に代わる案 100
  キイロタマホコリカビにおける集合の生物学的基盤 101
  キイロタマホコリカビにおけるパターン形成のモデル化 103
  cAMPへの応答としての細胞運動のモデル 109
  Box 8.1 モデル方程式の導出 113
  Box 8.2 キイロタマホコリカビにおけるcAMPラセン波のシミュレーション 115


9 穿孔性昆虫の摂餌集合
  集合プロセスへの導入 119
  キクイムシの幼虫による摂餌集合の適応的意義 123
  エゾマツオオキクイムシの集合形成のモデル 128
  シミュレーションの結果 130
  モデルの検討 132
  要約 133
  自己組織化パターン形成に代わる説明 133
  外部の目印と自己組織化の間の相互関係 137


10 ホタルの同調発光
  リズミカルな同調発光 141
  同調的でリズミカルな発光の適応的意義 143
  メカニズムに関する初期のいくつかの仮説 146
  個体の発光の神経生理 149
  連結した発振器に基づいたモデル 151
  自己組織化過程としての発光同調化 156
  Box 10.1 人間における同調化の実証 158
  Box 10.2 他の生物に見られる時間的パターン 160


11 魚の群れ
  群れの行動 165
  魚の群れ行動の適応的意義 172
  群れの中における個体の行動 174
  群れ形成メカニズムを説明する対立仮説 175
  自己組織化に基づく群れ形成のモデル 177
  Box 11.1 魚の群れのシミュレーション 183


12 ミツバチによる蜜源の選択
  コロニー・レベルでのパターン 187
  個体レベルでのプロセス 189
  採餌バチと未稼働バチ 191
  採餌バチの資源分配における集合的な知恵のモデル 200
  数式モデル 202
  このモデルのテストと使用 206


13 アリにおける蟻道形成
  野外での蟻道形成 215
  実験室における蟻道形成 217
  蟻道パターンの適応的意義 221
  蟻道形成中の個々のアリの行動 221
  動員を通しての集団的な意思決定のモデル 229
  2つの食物源の良いほうを選択する 229
  最短路の選択 235
  結論:アリとミツバチにおける動員 242
  Box 13.1 収穫アリにおける自己組織化された蟻道の巡回探索 245


14 軍隊アリの集団襲撃
  はじめに 253
  集団襲撃の集合構造 253
  軍隊アリ襲撃の適応的意義 254
  個体行動における基礎 255
  軍隊アリの集団襲撃の自己組織化 263
  このモデルの結果 270
  ある批判 274
  進化的意味 276
  結論 279


15 ミツバチにおける巣の温度調節
  巨視的に見れば 281
  微視的に見れば 284
  観察は自己組織化説を支持している 286
  温度調節の自己組織化モデル 289
  このモデルについてのコメント 299
  Box 15.1 ハインリッチの実験技術 300


16 ミツバチ・コロニーの巣板パターン
  コロニーレベルのパターン 304
  巣板パターンの適応的意義 304
  パターン形成を説明する対立仮説 307
  パターン形成の生物学的基盤 310
  個々のミツバチの行動 310
  自己組織化モデル 314
  他のモデリングのアプローチ 322
  セル・オートマトンモデル 322
  微分方程式モデル 325
  モデルの結果 329
  わかったこと 331
  システムの撹乱 331
  将来に向けての課題 333


17 アリによる壁づくり
  はじめに 335
  Leptothorax属の巣の構造 335
  巣壁の適応的機能 336
  どのようにして巣壁は建設されるか 336
  巣の大きさの制御 339
  壁形成についての基本モデル 349
  議論 363


18 シロアリの塚づくり
  はじめに 369
  オオキノコシロアリの巣の構造 369
  建設活動 375
  自己組織化とテンプレート 383
  モデルをつくる 386
  増幅と競争 388
  議論 392


19 狩りバチ類における建設アルゴリズム
  はじめに 397
  狩りバチ類の巣の構造 397
  巣のデザインの進化 398
  巣の建設を説明する対立仮説 405
  アシナガバチの建設活動の動態 410
  個体の建設規則 415
  格子−群れモデル 418
  質的スティグマジー・モデルの検証 431
  自己組織化に代わる対立仮説としての質的スティグマジー 432


20 アシナガバチ類における順位制
  はじめに 435
  社会的優位と繁殖的優位 437
  順位の形成とその特徴 437
  優位性を決定する要因 444
  順位制の適応的意義 447
  優位性モデルの目標 450
  モデル1: 自己組織化 450
  モデル1の結果 453
  モデル1に対する批判 458
  モデル2 458
  両モデルに関する議論 460
  モデル1の他動物への適用 462
  結論 465
  Box 20.1 モデル1の仮定 466
  Box 20.2 個体の認識を伴うモデル1 466
  Box 20.3 モデル1のモンテカルロ・シミュレーション 469
  Box 20.4 モデル2の仮定 470
  Box 20.5 モデル2のモンテカルロ・シミュレーション 470


Part III 結び



21 教訓と展望,そして自己組織化理論の将来
  何が示されたのだろうか 475
  何を学んできたのだろうか 475
  なぜ自己組織化が重要なのだろうか 478
  将来への展望 481


注 483
引用文献 485
訳者あとがき(松本忠夫) 515
人名索引 517
事項索引 520