「書影」の著作権について

突発的「著作権」トドの狼藉 —— 本務先である農環研でのこと.先日,農林水産研究情報センターの次期システム更新にあたり,研究用ウェブを利用する際には,公開内容に関する「著作権がらみ」のトラブルがないようにとの指示が下ってきた.とくにぼくの場合,ここ〈leeswijzer〉の母体になっている〈日録(dagboek)〉で,公刊図書の「書影(=書籍画像)」をどんどん掲載していることが,潜在的なトラブルのもとになるかもしれないとのこと.書影画像の著作権は出版社にあるのは確かだ(それだけではすまないかもしれないが).しかし,その日録を公開してもう6年になろうとしているが,いまだに一度もクレームを付けられたことはない.しかし,「万が一」を想定せよという危機管理のポリシーであれば,その方針に従うのはしかたないだろう.

ウェブサイトやブログを見渡すと,同様の「書影著作権」の問題は他でも起きているようだ.その場合,たとえばオンライン書店の「アフィリエイト」のようなシステムに乗っかれば,そこでの書影の画像は“合法的”に転載できるという意見がある.しかし,特定のオンライン書店の売買システムに依存したくないときには別の方策を取るしかない.

では,どーするか? 答えは実に単純で,書影画像のウェブ使用にあたって「著作権者の許可が必要」であるとしたら,その許可を取ってしまえばいいわけだ.「抜け道」とか「けもの道」をわざわざ探すまでもない.正面突破で合法化すればいいわけだ.そこで,ぼくの日録でよく取り上げる出版社に,下記のような定型的文面で「書影使用願」をメールで送った:

Subject: 【許可願】貴社出版書籍の書影画像のウェブ使用
To: ******@******

●●●書房御中:
三中信宏と申します.はじめまして.
貴社から出版されている本の書影(書籍画像)を,私が開設しているウェブサイトで使用させていただきたく連絡いたしました.私が個人的に開設しているウェブ日記(dagboek) http://cse.niaes.affrc.go.jp/minaka/diary.html において,貴社から出版された下記書籍を紹介・書評しています:
  ○○○○著『◎◎◎◎◎』
  △△△著『□□□□□□』
つきましては,上記サイトでの当該書籍の書影利用を許可していただけないでしょうか.事後連絡で申し訳ありませんが,ご一考をお願いいたします.
また,今後,貴社の他書籍につきましても上記サイトで紹介や書評を公開することがあるかと思いますが,書影の利用許可は今回と同様に連絡させていただくということでよろしいでしょうか?
※初めてメールをいたしましたので貴社の中での対応窓口がわかりませんでした.適切なご担当者さまに本メールを転送していただければ幸いです.

このような「書影使用願」を出し始めたばかりで,まだ十社ほどしかメールを送信していない.しかし,幸いなことに,メールを出したすべての出版社から「どうぞ使って下さい」という快諾の返事をすでにいただいている.どうもありがとうございます.

書影の著作権についてはまだ論議が尽くされていないところがあって,ひょっとしたら出版社がOKしただけでは(法的に)不十分なのかもしれない.しかし,ぼくとしてはこの点に関して「100%パーフェクト」を達成するつもりはさらさらない.「たった10%の努力」で「90%もの達成」が得られればそれでいいでしょう.何も手を打たない場合に比べれば「潔白度」はきっと高いだろうから.一方,「残り10%」の完璧さを期すのに,さらなる「90%」の努力をせよというのはぼくのタスクではないと思います.

過去の日録についても同様の措置をとらないといけないのだが,すでに6年近くのログが堆積しているので,いっぺんにカタをつけることは不可能だ.数年間かけてぼちぼちとさかのぼるしかないだろう.



[2018年9月17日追記]文中URLはすでにリンクが切れています.現在の日録〈dagboek〉はこちらです.