『中世・ルネサンスの音楽』

皆川達夫

(2009年2月10日刊行,講談社講談社学術文庫1937],東京,268pp., 本体価格960円, ISBN:9784062919371目次版元ページ

本書の元本は1977年というから,もう30年以上も前のことだ.しかし,ここで扱われている音楽がつくられた時代はさらに数世紀もさかのぼるので,ぜんぜん古びていない(当然か).たとえば,ポリフォニーの対語として「ホモフォニー」ということばがあるとは知らなかった.12〜13世紀のフランスのペロティヌス(ペロタン)や16世紀フランドルのラッスス(ラッソ)のような人名が出てくる.その音楽だけはヒリアード・アンサンブルによる合唱やスティーヴ・ライヒの音楽で知ってはいたが,このように音楽史の中での位置づけが定位されると安心できる.パウルヒンデミットの講義は受講生によるグレゴリオ聖歌の合唱とともに始まったというエピソードも.

そういえば,かつて NFK-FM をよく聴いていたころ,毎朝6時からバロック以前の古い音楽を流す番組〈バロック音楽のたのしみ〉があった.本書の中でも言及されているように,著者はその番組での解説者だった.NHK-FM の中でもとびきり長寿の番組だったが,あるとき打ち切りになって以来,FMというものを聞かなくなった覚えがある.