『鳥を探しに』

平出隆

(2010年1月24日刊行,双葉社,東京,660 pp.,本体価格3,800円,ISBN:9784575236859版元ページ

先日,ふと立ち寄った書店の新刊コーナーで「レジに連れてってよ」と呼び止める本がありお連れしました.日頃から,小説のたぐいはあまり買わないし,向こうさんも呼びかけてはくれないのだが,この本は例外的にお声がかりがあった.本文660ページ! 厚さにして5センチもある.木下杢太郎『百花譜』みたいな絵がカバージャケットはもちろん,表裏の見開きに.主役は対馬の絶滅鳥キタタキか.ぼくはたまたま書店で袖を引かれただけだったが,本書の刊行を首を長くしていた読者もいるようだ.キタタキのいた対馬とベルリンのTiergartenが妙に呼応したりして.それにしても,この造本と装丁はたいしたものだ.まだ手に取っていない人はシアワセをみすみす見逃すようなもの.まだ読み始めてはいないが,リチャード・フラナガン渡辺佐智江訳]『グールド魚類画帖:十二の魚をめぐる小説』(2005年7月10日刊行,白水社ISBN:4560027234書評目次)と同じ感触の本であると直感した.ノンフィクションにしてフィクションな内容で,残された「絵」が物語るというのも共通するところ.