『過去を復元する:最節約原理・進化論・推論(新版)』

エリオット・ソーバー[三中信宏訳]

(2010年4月20日刊行,勁草書房,東京,本体価格5,000円,ISBN:9784326101948目次

旧・蒼樹書房から出版された本書(→旧コンパニオンサイト)は,2010年4月,勁草書房より同一タイトルで復刊されます.今回の復刊では,原著者による寄稿「復刊によせて」(2ページ)と訳者解説「余波:〈かみそり〉をさらに鍛えること」(13ページ)を前後に補筆しましたが,それ以外の本文は旧・蒼樹書房版と同一の内容です.新版のコンパニオンサイトも近日中に開設する予定です.

原書が出版されて(1988年)すでに20年以上が経過しました.今なお本書が読まれるべき価値のある本であることは,今回の復刊に際して寄稿した訳者解説の中で述べました.その結論部分を下記に記しておきます:

系統推定のための方法論をめぐる論議はまだまだ尽きません.私たちは確立された系統推定法をすでに手にしているわけではなく,改良途中のツールを暫定的に用いているに過ぎないのです.系統推定における最節約法・最尤法・ベイズ法の取捨選択は,個別の状況ごとに計算シミュレーションに基づいてそのバフォーマンスを比較検討すると同時に,各方法の背後にひそむ一般的な仮定が何かを探り出すという両方向からのアプローチが今でも必要なのだろうと結論せざるを得ません.このような現状を考えるときソーバー教授が20年も前に書いた本書はその後の論争の進展を予期させる内容を含んでおり,生物学哲学・生物系統学・統計科学にまたがって今なお参照される基本文献であることに異論はないと考えます.

系統樹を推定することは,現在では,基礎から応用にわたる生物学のさまざまな問題を考察したり解決するときに不可欠となりつつあります.系統推定論の理論的基盤,とりわけその統計学的ならびに科学哲学的な論議に関心をもつ多くの読者が本書を手にされることを著者と訳者は願っています.

—— なお,この復刊本は,現時点では,オンライン書店 bk1 ですでに予約受付が始まっています.