『鳥を探しに』

平出隆

(2010年1月24日刊行,双葉社,東京,660 pp.,本体価格3,800円,ISBN:9784575236859紹介版元ページ

この本は,ホノルルからの帰国途中,太平洋上でイッキに400ページまで読み進んだ.著者本人,その父親,そして主人公である祖父,さらには彼が翻訳した極北の民たち.これらの人々が時空を異にして別々の人生を行きつつ,この一冊の本の中で互いに関係する“タイムライン”を形作っている.まだ途中までしか読んでいないが,対馬やアラスカの nature writing や民俗誌,ベルリンでの生活記録,はたまたフライベルク鉱山学校での哲学系譜など,読み込み甲斐のある話題とテーマが詰め込まれている.読者はキタタキやツシマヤマネコなど絶滅動物たちの自然誌を通奏低音としながら,複数のタイムラインを併読するという稀有の読書体験をもつことになるだろう.とてもおもしろい試みだが,同時に読者をはっきり選ぶ本であることもまちがいない.