『Form and Transformation: Generative and Relational Principles in Biology』

Gary Webster and Brian Goodwin

(1996年刊行,Cambridge University Press, Cambridge, xiv+287pp., ISBN:052135451X [hbk] → 目次

その昔,EVOLVE-ML で本書の刊行をアナウンスする投稿をしたとき,下記のような文章を書いた:

Date: Mon, 7 Oct 96 11:48:14 JST
From: minaka@affrc.go.jp (MINAKA Nobuhiro)
Subject: [EVOLVE:2017] Structuralism now
To: evolve@affrc.go.jp (EVOLVE ML)


EVOLVE reader 諸氏:


三中信宏(農環研)


# 現代進化生物学での「構造主義」の地位 #


すでに新刊広告でも流されていますが,Webster & Goodwin の「構造主義」生物学の本がやっと出版される(た?)ようです:


  Webster, Gerry and Brian Goodwin 1996(July).
   _Form and transformation:
      generative and relational principles in biology_
    ISBN 0-521-35451-X


どなたかすでに本書を入手されている方がおられましたら,情報をよろしく.


今から10年ほど前に(1986年の大阪会議の前後だったか),柴谷篤弘さんから「Webster & Goodwin が構造主義生物学に関する本を書いていて,イタリア語版はもう出るのだが,英語版を引き受ける出版社がないそうだ」という話をうかがいました.その後,柴谷さんから彼らの本のイタリア語版の新刊広告を送っていただきました.今回出た新刊は,この幻の「英語版」なのかなぁ?


それはそうと,構造主義生物学の「現在」について中立的(^^)に解説してある適当な本って何かありますか? 構造主義を自認する生物学者の書いた本ならたくさんあるでしょうが,それ以外の立場から書かれてある本のことです.Rudolf A. Raff (1996) The shape of life (U Chicago Pr) の新刊は,構造主義に関していえばページ数を割いて批判している方で,本によっては構造主義に関してまったく言及がなかったり(索引にすら載らない),「反進化論的」というハンコをポンと押しておしまいという扱いが少なくないような気がします.


以下は私の疑問のいくつかです:


  • Webster & Goodwin のように,系統や歴史とは別の次元で「かたちの法則」(laws of form)を論じることが果たして可能なのか?
  • M.-W. Ho らが主張する合理的分類学(rational taxonomy)は形態変換規則に関する極端な最節約原理を要求しているように私には感じられるが,それは何によって支持されるのか?
  • Stuart Kauffman (1993) The origin of order (Oxford UP) は,自然選択と「並立」する要因として自己組織化(あるいは emergent order)を論じている.これは歴史と構造を両立させる一種の妥協と考えていいのか?


現代進化生物学の中での構造主義思考の「系統進化」と「分岐関係」を論じることはきっと可能だと思われます.コメント歓迎.

結局,なんだかよくわからないまま当事者たちがどんどん退場してしまってすでに十余年が経過し,もうこれで終わったかと思っていたんだけどねー.