「The natural classification of plants according to the dynamic system」

Bunzô Hayata

1921年3月25日刊行,臺灣總督府民政部殖産局編,臺灣植物圖譜・臺灣植物誌料・第拾巻,pp. 97-234)

早田文蔵の「動的分類学」は波及効果が意外に大きいので,無視できない.彼の動的分類学のアイデアは,多変量形質空間における散布パターンを着目形質に関して低次元部分空間に射影することにほかならない.どの形質に着目したかによって複数の部分空間が生成される.それらの部分空間どうしは互いに「同格」とみなす点がポイント.彼はこの論文の中で,静的分類を通常の辞書に例えるならば,動的分類は Roget't Thesaurus のようなものだと明言している(p. 99-100).さらに,同じ富士山を異なる方角から見ればちがった山容が観察されるが,それらはすべて同じものであるとも指摘している(pp. 155-158).本論文で提示される植物分類体系は Engler の体系を基礎に置きながらも,独自のネットワーク分類をノードごとに命名し近隣群との接続を明示するという方式を採用している.