『科学する詩人ゲーテ』

石原あえか

(2010年4月30日刊行,慶應義塾大学出版会,東京,カラー口絵1 pl. +x+296 pp.,ISBN:9784766417272版元ページ

【目次】
本書で使用したゲーテ全集に関する覚書と略称について vi
凡例 x

序章 詩人ゲーテのもう一つの貌 《ポエジー》と《科学》 1

 I ようこそ、ゲーテ・ハウスへ
 II 西欧学術伝統におけるヒエラルキーと象徴的書物
 III ルクレティウス再発見と「教訓詩」というジャンル
 IV ニュートンの光学実験と詩人たち
 V ゲーテ作品における虹のモティーフ

第1章 始まりはイルム河畔の「庭の家」 ゲーテと植物学 35

 I ヴァイマル仕官の経緯と拝領した「庭の家」
 II リンネと恋する植物
 III ゲーテの「原植物」とセイロンベンケイ草
 IV ゲーテの伴侶クリスティアーネと教訓詩『植物のメタモルフォーゼ』
 V 閑話休題ゲーテの恋歌変遷 『野薔薇』から『見つけた』へ
 VI イェーナ大学附属植物園と詩『銀杏の葉』
 VII オーストリアから派遣されたブラジル探検隊とヴァイマル宮廷

第2章 種痘と解剖実験 ゲーテと医学 73

 I ゲーテ天然痘 『詩と真実』の描写から
 II ヴァイマルにおける天然痘流行 フーフェラントとシュタルク
 III 英国医師ジェンナーと牛痘法
 IV ゲーテが理想とした医師像 ヴィルヘルム・マイスターの解剖実習
 V イェーナ大学新解剖塔とゲーテの師・ローダー
 VI 解剖学図とイェーナ大学専属絵画教師
 VII 若き医学講師マルテンスと蝋製標本
 VIII 『遍歴時代』におけるヴィルヘルムと造形解剖学者との対話

第3章 避雷針と望遠鏡 ゲーテと物理学 111

 I 避雷針の発明者フランクリンとドイツにおける普及
 II 啓蒙科学の前哨戦 天体望遠鏡導入をめぐって
 III 近代のプロメテウス像復活
 IV 啓蒙主義による雷の脱魔術化
 V 自然研究者の限界
 VI ゲーテ後期作品における《望遠鏡》モティーフ

第4章 生命が充満する宇宙と天文台 ゲーテ天文学 141

 I 「世界の複数性」 ゲーテの時代の地球外生命論
 II ゲーテと近代天文学の興隆期 近代ドイツ天文学の中心地ゴータ
 III 科学する女性 マカーリエの歴史的文化的背景
 IV 天文学者アフォリズム あるいは火星と木星の間の小惑星
 V 一八一一年出現の彗星とイェーナ大学附属天文台建設

第5章 地球の形状とプロイセン大尉 ゲーテと測地学 175

 I 二人の測量大尉 オットーとトイドバッハ
 II 前提としての科学史的背景 地球はオレンジ型かレモン型か?
 III フランス科学アカデミーが派遣した高緯度および低緯度測量隊
 IV パリ子午線測量と最小二乗法
 V 『親和力』における大尉の実在モデル ミュフリンク男爵とプロイセン測量
 VI ガウスの愛読書とJ・パウルの描いた数学者・トイドバッハ大尉
 VII ラランドと高橋至時 「北極出地一度」をめぐって
 VIII プロイセンと日本を結ぶ三角測量技術 田坂虎之助の足跡を追って

最終章 ゲーテの「世界文学」と物語詩『魔法使いの弟子』 213

 I ドイツ文学から「世界文学」へ
 II ゲーテの世界文学とオーケンのドイツ自然研究者・医師協会
 III 世界文学の実りある成果 ソレと『植物のメタモルフォーゼ』仏訳
 IV 貨幣流通と翻訳作業 ゲーテ=カーライル書簡より
 V 情報洪水とゲーテの物語詩『魔法使いの弟子
 VI 《運河》のメタファー
 VII 近代の錬金術 賢者の石と紙幣発行


 註 253
 お礼の言葉 あとがきに代えて 287
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