『構造主義生物学』

柴谷篤弘

(1999年10月20日刊行,東京大学出版会,東京,viii+237+20pp.,本体価格2,800円,ISBN:413063318X[品切])

【目次】

序章:もうひとつの生物学総合理論はありうるか

・科学戦争をめぐって
・現代生物学「脱構築」のとき

第1章:「構造」への招待−タマゴが先かニワトリが先か

・循環
・「構造」という「法則」あるいは「拘束」
・拘束あるいは法則の恣意性
・言語における恣意性
・生物学における「構造」着想の由来
・物理法則と生物学の恣意性

第2章:遺伝子還元論の限界

・遺伝子万能論のわな−遺伝子本質論と社会的構築
・職業的専門家と「しろうと」のちがい
・細胞とDNA
・ヒト・クローンの「恐怖」
・遺伝性と生得性の拘束

第3章:生物学での「情報」概念の矛盾

・細胞にたいする外来性作用因の働き方
・同族の遺伝子やタンパク質
・連結子と受容子の「対」概念
・「構造」か「情報」か
・細胞の内部で「情報」がもつ矛盾−分子介添え役の登場
・「遺伝子の支配」とはなにか
・「遺伝情報」とはなにか
・予期されたものだけが記号としての遺伝指令になれる

第4章:遺伝子機能の多重性

・タンパク質分子などの機能は一通りとは限らない
・遺伝子の徴募あるいは共用
・多細胞生物での遺伝子の働き方の全体像−環境と遺伝子
・同じ発生遺伝子がつくりだすかたちの多様さ
・ちがった生物での発生遺伝子の働き

第5章:生物進化について

ダーウィン的進化−生物多様性の説明原理
ダーウィン理論と生物模型
ダーウィンの進化論とラマルクの進化論との関係
・適応的突然変異−その発見
・適応的突然変異−その性質
・隠れ遺伝子を求めて
・細胞の相互作用

第6章:生物の多様性について

・隠された同一性
・「種」につくりつけの多様性
・高次分類群(類位)に含まれる多様性の逆説−並行放散進化
・隔離による並行放散の例
・「特異化」と「先祖がえり」のはざまで

第7章:個体発生における「構造」

・キリンの頸−体の部分どうしの相互調節
・形態の展開
・形態の合成
・発生遺伝子の組み合わせによる多数の論理回路の創造
・発生の論理回路か遺伝子か、どちらが本源か

第8章:「構造」とそれによる拘束の起源

・「構造」の恣意性とその拘束
・遺伝暗号系での「内部選抜」による拘束
・言語と自然(生物)における恣意性−逆還元主義
・発生的拘束
・「共時性」の起源−「構造」は一世代以内につくられる
・新しい「構造」の成立
・構造創発の遺伝的契機

終章:生物学「主流」の外の諸活動

英米流「構造主義生物学」
・分子記号論、主体性と内部観測そのほか


あとがき
引用文献
索引