『内田魯庵山脈:〈失われた日本人〉発掘(上)』

山口昌男

(2010年11月16日刊行,岩波書店岩波現代文庫・G245],東京,x+370 pp., 本体価格1,360円,ISBN:9784006002459情報目次版元ページ

上下二冊合わせてほぼ900ページの山脈をやっと登攀完了した.内田魯庵の周囲に集まる有名無名の人びとにより緩くつくられた「市井の知識ネットワーク」を掘り起こして復元するのが本書の中心テーマである.下巻末に付された「人名索引」だけで24ページもある.この登場人物の多さは本書全体をして長編大河ドラマを髣髴とさせる.知らない人名が次々に出てくるのがむしろ快感になってくるのはフシギ.こういう地下水脈があったとは驚きだ.なお,上巻でそれぞれの章の準主役を張る坪井正五郎市島春城沼波瓊音フレデリック・スタール斎藤昌三の五人については,著者が監修している国書刊行会の「知の自由人叢書」で著作が復刊されている.