『ダーウィンと進化論の哲学』

日本科学哲学会編/横山輝雄責任編集

(2011年6月25日刊行,勁草書房[科学哲学の展開・2],東京,本体価格3,900円,viii+308pp, ISBN:9784326101788 詳細目次版元ページ

執筆者の大半はすでに知っていて,講演を聞いたり論文を読んだりしたことがある.腹式呼吸の御大が50ページあまりも書いているとは知らなんだあ〜.目新しい収穫もいくつかある.William Whewell について論じた:青木滋之「19世紀イングランドの科学哲学 —— 自然選択説をめぐって」(pp. 87-104)や現代進化学側からの宗教攻撃について評した:木島泰三「現代進化論と現代無神論 —— デネットによる概観を軸に」(pp. 127-148),“エボデボ”と“エコデボ”の発展を科学哲学側から見た:戸田山和久「「エボデボ革命」はどの程度革命的なのか」(pp. 191-212)は一度は読んでみたかった論文.生物学と経済学との接点を探る:田中泉吏「生物経済学 —— もう一つの統合」(pp. 255-278)は新しい話題.Journal of Bioeconomics(→公式サイト)なる雑誌があることを知った.統計学的認知に関する:網谷祐一「頻度仮説と進化からの論拠」(pp. 279-296)は,ヒトのもつ素朴統計学・確率論的なセンスを進化的に見直す契機となる.本書に収められた論文はすでに別媒体で公表されているものがほとんどだが,自然科学系の読者にはアクセスしにくい雑誌もあるので,このような形式でまとめられていると役に立つ.ざっとブラウズした範囲ではマイナーな校正ミスが点在している.重版の際には「蟲採り」を怠りなく.