『高等学校の確率・統計』

黒田孝郎・森毅・小島順・野崎昭弘

(2011年8月10日刊行,筑摩書房ちくま学芸文庫・math & science],東京,524 pp., 本体価格1,600円,ISBN:9784480093936目次版元ページ

三省堂から出された高校の検定教科書とその指導資料を合本したもの.合わせて500ページを越える分量がある.ざっとブラウズしたかぎりでは,場合の数の計算から始まって,平均・分散を中心とする記述統計学,二項分布と正規分布にもとづく確率分布論,さらに仮説検定にまでいたる推測統計学に関して詳しく書かれている.指導資料とともに巻末の資料(エッセイ群)がおもしろいかも.

今の高校の教育課程では,「確率・統計」は critically endangered な教科だと思う.毎年,大学で講義するたびに「高校で確率・統計は習った?」と訊いているが,ほとんど誰も受講していない.事実上,確率・統計は大学で学ぶ教科とみてまちがいない.となると,本書は高校生向けではなくむしろ大学学部生用の「教科書」として指定ができるかもしれない.ここまでの基礎知識が事前にあればまったく言うことなし.とりあえず,租界Rの統計本リストを更新しないと.

思い起こせば,高校のときに確率・統計を何で体系的に勉強しただろうか.科学振興社のモノグラフだったか,それとも緑チャートだったか…….ムカシのことなので記憶がおぼろ.少なくとも授業で勉強した覚えはまったくない.高校の時の「数III」は微積オンリーだった.ただ,大学入試では確率・統計の問題でかなり苛酷な出題がされることが事前にわかっていたので,個人的には時間をかけて勉強した記憶がある.しかし,入試戦術としては「確率・統計は最初から捨てる」がベストだったかも.