『東京大学三崎臨海実験所雑記』

毛利秀雄

(2011年8月刊行,生物研究社,東京,本体価格1,800円,ISBN:9784915342608版元ブログ

三崎臨海実験所は世界的にも歴史のある海洋研究所なので,さまざまなエピソードには事欠かないだろう.ずいぶん前に出た:磯野直秀『三崎臨海実験所を去来した人たち:日本における動物学の誕生』(1988年8月刊行,学会出版センター,東京,ISBN:4762215570)を手にしたことがある.実験所の創設一世紀に出されたこの本が通史であるとしたら,著者自身が過ごした三崎での五年間(1955〜1959年)にわたる「日記」という位置づけの今回出版された新刊はいわば“私史”にあたるのだろう.“私史”という点ではワタクシにもひとつあるので備忘のため記しておく.当時,静岡大にいた古生物学者の阿部勝巳さんが1998年の夏に交通事故で亡くなったのは,千葉の自宅から三崎臨海実験所に向かう途中だったという.その逝去の報を受けた三崎の教員たち(学生実習が予定されていたという)はその夜いくら酒を飲んでも酔えなかったとあとで聞いた.