『酒学集成・第2巻:世界の酒の旅』

坂口謹一郎

(1997年11月26日刊行,岩波書店,東京,vi+349 pp., ISBN:4000261878版元ページ

前半はエッセイ集『古酒新酒』のうち,第1巻に入らなかった残り半分.「醗酵:東アジアの知恵」がとてもおもしろい.後半は岩波新書『世界の酒』の復刻.もう半世紀も前の世界酒紀行.巻末の解説記事はサントリー会長だった佐治敬三が書いている.スイス紀行の章「ミュラー・チュルゴー」(pp. 165-173)に,マギー・ブイヨンの由来についてのくだりがあった:「マギーはもともと日本の醤油をまねたもので,キッコーマンの持主の「茂木」から出ているなどといううがった説もある」(pp. 172).これはさすがにうがち過ぎで,ネスレのサイトにはマギーの由来が詳しく書かれている:「マギーの誕生」.ただし,坂口謹一郎が1950年代にスイスに行ったときは,マギー・ブイヨンの工場を見学させてもらえなかったことは事実らしい(pp. 171-172).組成にグルタミン酸が多いので,日本の〈味の素〉を混ぜているのではと著者は推測している.本書は今から60年も前の1950年代の紀行なので,現代とは「酒事情・食糧事情」がかなり異なっていたことがうかがえる.