『路上と観察をめぐる表現史:考現学の「現在」』

広島市現代美術館(監修)/松岡剛、中谷礼仁、内海慶一、田中純、石川初、南後由和みうらじゅん、中川理、福住廉(執筆)

(2013年1月25日刊行,フィルムアート,東京,239 pp., ISBN:9784845912094版元ページ

ぼちぼち読み始め.松岡剛は「観察者たちがもたらすもの」(pp. 10-19)の中で:


「今は考現学について,対象や調査対象の規定を試み,他分野の研究との関係について論ずることで学問として位置づけようとするが,その試みは体系を構築するまでの蓄積を得ないまま終息に向かっていく.むしろ,残された調査資料からは,体系を構築し,発展していくのではなく,関係性を結ばない個別の多様なディテールが止め処なく収集されていく点に,考現学の特質を見ることさえできるだろう」(p. 12)

と指摘している.「体系」ではなく「個物」を重視するという日本の蒐集文化の伝統は考現学の背後に流れる底流だった.