「“罵倒系”書評の傾向と対策」

本の書き手であるワタクシにとって「書評頻度分布」の平均と分散こそ第一義的に重要であり,個々の書評はその背景のもとで初めて意味をもつ.書評頻度分布の全体的特性が “罵倒系” だったなら,よほどひどい本を書いてしまったと反省して出家するしかない.一方,特定の罵倒系書評が書評頻度分布の全体的特性からはずれた “outlier” な場合は安心して無視できる.刺のような言葉のひとつひとつがぐさぐさ刺さるほどワタクシは繊細にはできていない.そういう書評者は逆に書き手によって冷厳に評価されることになる.

今回,拙著『進化思考の世界』に対する典型的な“罵倒系”書評をアップした匿名「i」氏がアマゾンに投稿した他の書評群を見ると「今西錦司」や「構造主義生物学」あたりにシンパシーを感じているようだ.ああ,そういうことですか.匿名「i」氏の「書評事前分布」がこのように明らかになった以上,ワタクシの本に対する罵倒系書評が投稿される事後確率はかなり高いのも当然のことだ.納得しそして安心した.オンライン匿名書評だからといって勝手なことを書けば,逆に自らが「評価対象」になるのは必定.

幸いなことにこの書評者はワタクシの本は「もはや読む気力がない」そうなので,今後はこの手の罵倒系書評を目にすることもないにちがいない.善哉善哉.記名書評よりも匿名書評の方が書評頻度分布の「分散」値は有意に大きいだろうとワタクシは感じている.だからこそ,書き手としては書評頻度分布をつくり,各書評者の傾向性に関する事前分布を踏まえて個々の書評を解釈するのがシアワセな執筆人生を送るコツだろう.

参照:「 “書評頻度分布” はココロの安らぎを保証する」(2013年5月26日).