青木淳一
(2013年9月5日刊行,東京大学出版会,東京,x+197+4 pp., 本体価格2,800円,ISBN:9784130633383 → 版元ページ)
第8章第4節「分類学者の最期」に書かれていること:「分類学者はある年齢に達して老い先短くなったら,研究をストップし,まずいままでに記載したタイプ標本に納入すべき博物館の登録番号をつけ,なるべく早い時期に博物館か大学に納める」(p. 190)/「家族の多くは,残念ながら当人の研究やコレクションに無関心である場合が多く,生前に寄贈場所を指定して頼んでおかないと,ゴミのように処分されかねない」(p. 190).遺言みたいなエンディング.
日本語書名は『博物学の時間』だが,英語書名は『A Return to Natural History』となっている.英語の『博物学への回帰』の方が訴求力があると思う.
【目次】
はじめに i第1章 博物学を楽しむ――大自然に学ぶサイエンス 1
1. 博物学とは 1
2. 博物学の楽しさ 2
3. 役に立たない博物学の意義 3
4. 日本の自然 4第2章 名前をつける――生物のラベリング 14
1. 生物の呼び名 14
2. 世界共通の名前、学名 24
3. 生物の種類 28
4. 生活のなかの分類学 32第3章 生物を分類する――博物学の仕事 36
1. 分類のための図鑑と文献 36
2. 種の同定依頼 43
3. 新種の発見 46
4. 博物館の役割 51第4章 生物を採集する――趣味から研究へ 59
1. 採集の楽しみ 59
2. 子どもの虫採り 65
3. 趣味の採集 70
4. アマチュアの貢献 51第5章 分布を調べる――生物地理の視点 77
1. 生物地理区 77
2. 分布境界線 80
3. 生物分布図の作成 84
4. 垂直分布 96
5. 島の生物 100第6章 野外へ出る――北のフィールドへ 109
1. 美ヶ原で初めての新種発見 ― 一九五六年 109
2. 日光の森とダニ ― 一九六一年 116
3. 森の地面のマイクロハビタート ― 一九六六年 122
4. 志賀山の森でのIBP研究 ― 一九六八〜一九七二年 130
5. 皇居のお化けヒル ― 一九六八年 130
6. 樹上に住むササラダニ ― 一九六九年 134
7. 北海道ポロシリ岳での命拾い ― 一九七一年 138第7章 野外へ出る――南のフィールドへ 145
1. 屋久島の海岸から山頂へ ― 一九七四年 145
2. 小笠原諸島のアフリカマイマイ ― 一九七七年 151
3. 幻の虫、サワダムシ ― 一九八一,一九八七年 156
4. 南海のユートピア、トカラ列島 ― 一九年 162
5. アリの巣の同居人 ― 一九九三年 169
6. 真鶴海岸のツツガムシ ― 一九九八年 173
7. ダニに喰いついた男 ― 二〇〇〇年 176第8章 博物学を伝える――ナチュラルヒストリーの未来 180
1. 科学の土台 180
2. 標本と文献は国家の財産 182
3. 後継者の育成 186
4. 分類学者の最期 189
おわりに 195
初出誌一覧 197
引用文献 [1-4]