「本か論文か?台湾社会学者の学術コミュニケーション選択:3人の専門家へのインタビュー」

川上桃子

(2013年9月公開,日本貿易振興機構・アジア経済研究所「海外研究員レポート」→ html | pdf [open access])

台湾での人文社会科学コミュニティーでの出版をめぐる現状に関する現状レポートだが,日本にもかなり当てはまる興味深い内容だ.もちろん,人文社会科学以外の分野にも通じる.

以下,いくつか備忘メモ:「学者としてのトレーニングの過程で、雑誌論文しか読んでいない人は、本を書きたいとは思わない」/「本を書く人は、とにかく神経が図太くなければなりませんよ(笑)。周囲が次々に成果を出していく中で、「去年のあなたの出版物は?」と聞かれ続けることに耐えねばなりませんからね」– 本だけを書く研究者はさぞかし風当たりが強いだろうなあ/「本――もちろん「優れた本」という限定つきですが――には、論文にはない持続的な影響力が生まれます。学界の流行が過ぎると多くの論文が読まれなくなるのに対して、根源的な問いと向き合った優れた本は、長期にわたって、読者に影響を与え続けます」– うんうん/「しかし、評価システムのプレッシャーのなかで、論文を成果発表の中心とせざるをえない状況が生じています。けれども、より重要なのは、大学院等でのトレーニングの過程で、ロールモデルとなるような魅力的な書物との出会いがあるかどうかではないでしょうか」/「今の台湾の若い世代の研究者が直面している環境は、ありていに言って、本を書くことを罰するものです」/「本を書くには時間がかかるのに報われないのだから、若い研究者が本を書かないのは当然です」.