「数式による汚染と除染」

Tim W. Fawcett and Andrew D. Higginson | Heavy use of equations impedes communication among biologists | 25 June 2012 doi: 10.1073/pnas.1205259109.生態学・進化学の分野では,論文の「数式密度」が高いと引用されにくくなるという主張.論文執筆戦略としては本文ではしっかり “数式除染” した上で,appendix に “危険物” をすべて押し込めろと.

関連記事:Altmetric | Interactions: Foggy with a Risk of Mathematics | 16 Nov 2012.数学ができる生物学者のみなさんは,一般の生物学系研究者にとって数式がいかに「近寄りがたい存在」かを思い知るべきでしょう.数式は,水戸黄門の印籠みたいに,万人をひれ伏させる神託ではあっても,親しみをもたれる相手ではない.

日常の統計学講義でも,「数式」で書けることは必ず「ことば」でも同等に説明できるはずなので,相手が学部生・大学院生・職業研究者を問わず,高座では “数式除染” は励行するように心がけている.以前,『生物系統学』を必死で書いていたころ,担当編集者から「数式がひとつ増えると読者が10人減ります」と言われたことがある.「たった10人か」と思ったが,数式10個で読者が100人減ったら,もともと部数の少ない学術書としては か な り 痛手になると悟った.

反論記事もある:Andrew D. Fernandes | No evidence that equations cause impeded communication among biologists | 6 Nov 2012 doi: 10.1073/pnas.1211892109 ※相関関係≠因果関係という批判.