『ふしぎな国道』

佐藤健太郎

(2014年10月20日刊行,講談社[現代新書2282],東京,254 pp., ISBN:9784062882828版元ページ

国道標識に “おにぎり” という愛称を付ける熱烈な「国道マニア」が日本にはたくさんいることを本書で初めて知った.国道マニアにとっては,車が通れないような廃道あるいは民家の軒先や階段さえ国道に指定されている場所(「酷道」)が快感をもたらすらしい.著者は言う:「酷道は毎年少しずつ姿を消しつつある.もちろんこれは道路の正常な進化であり,利便性という意味からすれば喜ばしいことに違いないが,好事家としてはやや淋しいことでもある」(p. 82).このすなおなマニア感覚がこのましい.あえて言うなら,宮脇俊三廃線探訪+赤瀬川原平トマソン丸田祥三の廃墟美学の三点セットを併せ持つ強烈な本.しろうとがみだりに近寄ったりしてはならない〈酷道結界〉が妖しい.国道マニアは健康的に病んでいるなあ.随所にカラー写真が散りばめられている.茨城県内の事例多し.みんな読め.