『系統樹をさかのぼって見えてくる進化の歴史:僕たちの祖先を探す15億年の旅』

長谷川政美

(2014年10月25日刊行,ベレ出版,東京,本体価格2,600円,192 pp., ISBN:9784860644109版元ページ

科学バー〉や〈博物ふぇすてぃばる!〉でお披露目されていたという「系統樹マンダラ」(by 小田隆)が気になっていたのだが,いただいた本書にはその縮刷版が何枚も掲載されている.全編を通して生物のカラー写真と系統樹が満載の大判本.ヒトから語り始めて,系統樹のルーツへとさかのぼる本書のスタイルは,リチャード・ドーキンス[垂水雄二訳]『祖先の物語(上・下)』(2006年9月20日刊行,小学館ISBN:4093562113 [] / ISBN:4093562121 [])を連想する.著者はあとがきで,この系統樹マンダラの構想について,次のように述べる:

「ここ数年,進化の産物である生物多様性を図像的に表現するにはどうしたらよいかを考えてきました.その結果,たどり着いたのが「系統樹マンダラ」です.この本は系統樹マンダラを使ってどのように生物多様性が進化したかを解説したものです」(p. 182)

生物多様性系統樹による mandala として視覚化するという著者の意図は十分に達成されている.本書に描かれている系統樹マンダラはいずれも,伝統的な「環状樹(circle tree)」の系譜に属していると見なすことができる.さらに最後の真獣類の系統樹マンダラは三次元的な構成で描かれていて,オランダの植物分類学者 Hermann Lam の「球面樹(spherical tree)」(1936)を曲面展開した様式で,とても興味深い.今後,ワタクシたちの〈系統樹曼荼羅〉巡回展が別の機会に開かれることがあれば,この「系統樹マンダラ」はもちろんエントリーしたいと思う.