『文体の科学』

山本貴光

(2014年11月25日刊行,新潮社,東京,294 pp., 本体価格1,900円,ISBN:9784103367710版元ページ

対話・法律・科学・辞書・小説などジャンル別の文体論.「科学」ジャンルについては,英国の最古の科学雑誌 Philosophical Transactions の例など,興味深い事例がいくつも取り上げられていて,「科学の文体」をモノとしての “本” の中で理解することができる.また,牧野植物図鑑のような図版入りの文体についての言及もあり,関心をそそられた.かつて保育社から出ていた竹内吉蔵『原色日本昆虫図鑑』は分類群の名称が “漢字” でも併記されていたので,現行のカタカナ和名よりもはるかにリアルな語感を伴っていた.それを必死で書き写して覚えたのはワタクシが小学生だった頃.ああいう図鑑ジャンルの文体にも変遷がある.ワタクシ的には,『文体の科学』では,パラテクストとしての「図版」とテクストとしての「文体」の相互作用というか力関係の妙についてもっと語ってほしかった.