『Die Kunst der Benennung』第4章

Michael Ohl

(2015年刊行, Matthes & Seitz, Berlin, 318 pp., ISBN:9783957570895 [hbk] → 目次版元ページ

第4章「Typen und die Materialität der Namen」(pp. 113-144)読了.ずいぶん間が空いてしまった.著者は「なぜヒト Homo sapiens には “タイプ標本” がないのか?」という問題に光を当てる.Holotype に準じるタイプ標本を記載しようとした古生物学者 E. D. Cope のエピソードをまじえつつ,著者は「タイプ標本は typical ではない」と強調する.生物集団のもつ変異性 ― 著者は正規分布(いやドイツだからちゃんと “Gauß Verteilung” と書いている!)まで言及する ― を考えればタイプ標本の “タイプ” とは単なる Namensträger としての意味しかない.しかし,だからこそ重要なのだと言う.つまり,タイプ標本が果たすべき役割は,安定性をもたらし,混沌の中に秩序を見出し,連続性の中での参照となることであると著者は指摘する(p. 141).リンネ本人を Homo sapiens の Lectotype とするという主張があることを初めて知った(p. 142).