『Comparative studies on the behaviour of the Anatinæ』組版のこと

Konrad Lorenz[Translated by C. H. D. Clarke]

(1953年刊行, Reprinted from the Avicultural Magazine, 87 pp., The Avicultural Society, London)

この英訳論文の元になった:Konrad Lorenz 1941. Vergleichende Bewegungsstudien an Anatinen. Journal für Ornithologie, 89 (Ergänzungsband 3: Festschrift Oskar Heinroth): 194-293 pdf [open access] は,その後,彼の論文集:Konrad Lorenz『Über tierisches und menschliches Verhalten: Aus dem Werdegang der Verhaltenslehre. Gesammelte Abhandlungen, zwei Bände』(1965年刊行,R. Piper & Co. Verlag[Piper Paperback], München → 目次:Band I Band II)に所収されている(Band II: 13-113).

タイポグラフィー的に見たとき,このローレンツ論文の独自性は,カモ類の鳴き声の “声調” を夢枕獏的な “タイポグラフィクション” によって地の文で可視化している点だ(写真上).ワタクシはこういう表現をほかの科学論文で目にしたことがない.このドイツ語原書は1965年出版なんだけど,いったいどうやって組版したんだろうか.版元の R. Piper & Co. Verlag すごい!

このローレンツ論文集は日本語に翻訳されている:コンラート・ローレンツ著[丘直通・日高敏隆訳]『動物行動学(全4巻)』(1977年〜1980年,思索社,東京 → 目次:第I-上巻第I-下巻第2-上巻第II-下巻)の「第II-下巻」所収(pp. 9-138).該当ページ(p. 54)を見てみると,これまたすごい縦書きのタイポグラフィクションを組版していた(写真中).思索社も相当すごいぞ.

なお,ローレンツ論文の英訳別刷りのタイポグラフィーは地の文ではなく別パラグラフとして “図表化” されていて,しかも組版が粗雑に “線形化” されているので,可視化表現としては “誤訳” “劣化” かもしれない(写真下).でも,電算写植がなかった時代だからしかたないよねぇ.そんなことをいったら,おおもとの1941年の原論文はいったいどんな組版なのかが興味津々ではある.