『侘寂温泉:東日本編』『侘寂温泉:西日本編』

東日本編は,新潟〜長野〜静岡以東の東日本編.類書とはちがって立ち寄り共同浴場や素泊まり旅館を中心にセレクトされている点がユニーク.確かに,本書に取り上げられている温泉はいずれも “侘寂温泉” にふさわしいかも.ワタクシ的には青森〈新屋温泉〉(pp. 50-51)が取り上げられていてとてもうれしかった.ここの緑色の源泉かけ流しは極楽そのものだった.もう20年近く前の2001年7月27日(金)に新屋温泉をワタクシが再訪したときの日録が残っている:

午前4時30分につくばの自宅を出発.[桜土浦]常磐道磐越道→[郡山]東北道と乗り継いで,青森の黒石インターをおりたのが,ほぼ正午.途中3ヶ所計1時間半の休憩を除けば,約6時間の走向で青森にたどり着いたことになる.黒石インターまでの走行距離はおよそ650km.ご近所の赤塚師の話では「8時間くらいはかかるのでは」とのことだったが,意外にスムーズに走れた.天候は曇りときどき小雨で,台風の遠い影響ど北東気流が流れ込んでいたせいか,気温も低く,東北道にところどころ掲示されている温度計はおしなべて21〜23度を示していた.

 

新屋温泉(平賀町,300円,午前6時〜):黒石インターをおりて,十和田道を黒石市街地方向に進み,最初の信号を鋭角に左折して吹上金屋黒石線に入る.リンゴ畑を縫うやや細い道をそのまま2kmほど直進,新屋の集落のくねくね道をさらに進むと,郵便局(平賀新屋局)の近くに新屋温泉は見つかる.新屋温泉については,すでにたびたび絶賛されているので,重複は避けよう.長時間にわたる運転でいささか凝ってしまったからだは,緑色に透き通った湯と独特の硫黄臭に即座にほぐれていった.ぬるぬる感と泡のつき方も以前来訪したときとまったく同じ.先客のお年寄り4人が掛け流しの中で常連トドとなっていたが,私もちょっと失敬して新米トドと化した.極楽.インターから数分以内の距離にこんな温泉があるのは,言うことなし.

新屋温泉に限らず全国いたるところに “侘寂温泉” がまだ残っていることを本書で知る.

他方の西日本編は,東日本編よりもよりディープ度が増しているようだ.別府鉄輪温泉〈谷の湯〉・妙見温泉〈田島本館〉・湯川内温泉〈かじか荘〉など入湯したことのある温泉がピックアップされている.