斎藤恭一
(2020年5月15日刊行,イースト・プレス,東京, 253 pp., 本体価格1,400円, ISBN:978-4-7816-1878-4 → 版元ページ)
読売新聞小評が公開されました:三中信宏「大学教授が、「研究だけ」していると思ったら、大間違いだ! 斎藤恭一著」(2020年7月19日掲載|2020年7月28日公開)
書名がすべてを物語る。つかみどころのない学生たちへの教育と指導の戸惑い、大学内外の煩わしい数々の雑務、高校への出前講座、企業との共同研究、研究資金集めの日々など、本書は大学でのリアルな営みを脚色なく描き出す。いまなお残る「浮世離れした大学のセンセイたち」という先入観はみごとに突き崩されるだろう。大学のセンセイたちはときに理不尽な現実社会のなかで生き延びるために八面六臂の大立ち回りをこなしているからだ。
一方で、この本に書かれているキャンパスの日常風景が、少なくとも現在の新型コロナウイルスが蔓延する状況ではまったくの“夢物語”であることに読者は愕然とするだろう。息苦しい“3密厳禁”の非日常では、教員や学生たちが「お互いの息が聞こえる距離で一緒に」語り合うことさえ望むべくもない。
パンデミックの暗雲が広がる前の大学はこんな風景だったのだと懐かしささえ覚えてしまうほどだ。やがて到来するはずのポスト・コロナ時代には、どのようなキャンパス風景が戻ってくるのだろうか。(イースト・プレス、1400円)
三中信宏[進化生物学者]読売新聞書評(2020年7月19日掲載|2020年7月28日公開)