参照表現あれこれ

原稿執筆時に「上述したように」とか「前章で説明したが」とかつい書いてしまうクセがワタクシにはあるようだ.しかし,読者にとってはこういう参照表現はきっとイライラのもとになるにちがいない.ましてや「賢明な読者ならおわかりだろうが」などと書くのはケンカを売っているにちがいない.その解決策はとてもシンプルだろう.「上述したように(第〜章〜節参照)」とか,ノンブルがフィックスされている場合は「前章で説明したが(p. 〜)」と書きさえすればいい.要するに,本の “どこ” を読めばそれが示されているかが明記されていればよい.

タチが悪い書き手ならば,「すでに説明したように」は単なる口癖であって,著者本人でさえどこに書いたかを把握していないこともきっとあるにちがいない.そういう場合は,賢明なる読者ならおわかりだろうが,軽やかに読み飛ばせばいい.

ワタクシ的には,ちょっと数学っぽい論文を読んでいて,「この定理の証明は自明である」と書かれると血圧が少し上がることもある.さらっとケンカを売られているような気配を感じる.それくらいだったら「この証明を示す余白は今はない(ページ超過料金のため)」とか書いてくれたらいいのにねえ.

また,商売上手な書き手なら,「私の前著『◯』の第△章〜◆節 pp.※〜※で詳細に説明したが」とことさらに詳しく参照箇所を示して,ナイーヴな読者にその本を買わせるくらいの “悪辣” きわまりない販促戦術を弄することもきっとあるにちがいない.

Cf: HUFFPOST「「前も言ったけど」は自粛します。料理中の夫を注意した女性の漫画に反響」(2021年2月2日)